「人生100年時代」といわれる現在、最期まで自分の足で歩き、自分のことは自分でできる人は、どのくらいいるのだろう。いくら望んでいても、病気になったり、怪我をしたり、筋肉が弱り、歩けなくなることもある。そのようになってしまったら、嫌でも他人の世話にならなければならない。
そこで、今回は自分のことができなくなった場合、どこで、誰に世話をしてもらうか、それにはいくらくらい費用がかかるかを考えてみたい。
老後はどこで、誰と暮らしたい?
以前、高齢者に、老後の生活を送るための「終の棲家」として、自宅と施設のどちらがよいかを聞いてみた。その結果は、ほぼ半々。しかし、自宅に住みたいと言っていた人も、寝たきりになったら施設に入りたいと思っている人が多かった。確かに、自立している間は自宅に住み、好きな物を食べ、好きな時に入浴したり、寝たりと、自由に生活したい。
そして自由に動くことができなくなったら、家族に犠牲を強いることなく、施設に入りたいと考える人は多いだろう。なぜなら、早く施設に入り、なんでも人任せにすると、早く認知症になってしまうおそれがあるし、反対に自宅に住み寝たきりになったときに家族に介護をしてもらうと、家族が精神的、肉体的に犠牲になってしまうおそれがあるからだ。
本当に介護が必要になってから施設に入るのが一番よいと私も考えている。そのためには、自宅で過ごす期間をなるべく長くすること、つまり健康寿命を伸ばすことが大切だ。
高齢者施設にはどんな種類があるの?
本当に介護が必要になった時、どんな施設があるのだろう。高齢者施設は大きく分けて、介護を必要とする人の介護施設と介護が必要でない人の施設がある。
介護が必要な人の介護施設としては、以下の7つがある。
(1)「特別養護老人ホーム」
(2)「介護老人保健施設(老健)」
(3)「介護療養型医療施設」
(4)「介護医療院」
(5)「ケアハウス(介護型)」
(6)「介護付き有料老人ホーム」
(7)「グループホーム(認知症の人用)」
自立した人用の施設としては、次の3つがある。
(8)「ケアハウス(自立型)」
(9)「サービス付き高齢者向け住宅」
(10)「有料老人ホーム(住宅型)」
公的施設は1、2、3、4、5、8、民間施設は6、7、9、10である。それぞれの施設の特徴、入居条件は以下の通りである。ここでは介護が必要になった場合に入る施設について述べるので、介護施設のみをご紹介する。
(1)「特別養護老人ホーム」 公的な施設なので費用が安い。入居金も不要。個室でも月々の費用は15万円位。ただし、「要介護3」以上でないと入居できない。
(2)「介護老人保健施設(老健)」 公的な施設なので入居金は不要。月9~15万円。65歳以上で「要介護1」以上であること。医療ケアやリハビリを受けられる。
(3)「介護療養型医療施設」 公的な施設で、入居金は不要。月9~17万円。65歳以上で「要介護1」以上であること。回復期の寝たきり患者に対する医療ケアやリハビリを提供。
(4)「介護医療院」 廃止予定の介護療養型医療施設の入居者の転居先として2018年4月に創設。公的な施設なので入居金は不要。月7.6~13万円。
(5)「ケアハウス(介護型)」 公的な施設で入居金は数十万~数百万円。所得に応じて月々の費用が決まるが、おおよそ6~20万円。65歳以上で要介護1~2の人。
(6)「介護付き有料老人ホーム」 民間の施設なので入居金(都内の多くの施設は数千万円)が必要。サービス等は施設ごとに差があり、食事の質、部屋の広さ、共用設備も千差万別。月々の費用は30万円くらいかかるところが多い。
(7)「グループホーム(認知症の人用)」 民間の施設で認知症の人を受け入れる。費用は施設ごとに異なり、ばらつきがある。
費用はいくらぐらい用意すればよいのか
上記のように、費用は公的施設と民間施設ではかなり差がある。
公的施設では通常、数千万円かかる入居一時金がほとんど不要。月々の費用は15万円程度。ほとんどの人は年金の範囲内で入居できると思われる。しかし、入居希望者が多いため、実際に入居するのは難しい。多くの人は公的施設に入居できないので、民間施設に入居することになる。
民間施設は費用がかかるので、数千万円の貯蓄がある人はよいが、ない人は家を売って資金を用意したり、家を担保にリバースモーゲージを利用して資金を用意することが考えられる。数百万円台で入れる施設もある。
一番重要なことは見学して実情を知り、自分に合うかどうかを確かめること
入居を考えている施設が自分に合うかどうかを見極めることが重要で、見極めないと、ずっと暮らしていけるかどうかわからない。また、病院との連携、施設の経営状況も把握しておかないと心配だ。退職後の時間がたくさんあり、動ける時に情報を集め、自分に合いそうな施設をたくさん見学し、食事も試食し、できたら入居者と話してみて、自分に合うかどうかを確かめることが重要だ。
(文=藤村紀美子/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会)