来年の消費増税、見送りの可能性(3)…低所得者対策カットでも軽減税率の財源不足
「キャッシュレスでポイント還元」という愚策
軽減税率以外にも、政府はさまざまな増税緩和策を打ち出そうとしていますが、「それで景気の落ち込みを防げるのか」というものばかりです。なかでも愚策中の愚策が、「キャッシュレス決済を条件にポイント還元を行う」という施策です。
中小の小売店が対象ということで、それらの落ち込みを減らそうという意図はわかりますが、政府がカードリーダーを配ってくれるわけではないので(補助金は出るようですが)、店側は読み取り機を買わなければならず、事務処理の手間もかかります。また、高齢者が多い店では、せっかく読み取り機を導入しても、あまり使われない可能性もあるでしょう。
さらに決定的なのは、それによって店の売り上げが落ちる可能性があるということです。なぜなら、現金決済の場合は1万円を払えば1万円が店の売り上げになりますが、キャッシュレスでは決済に使われるクレジットカードなどによっては店側がカード会社に2~3%の手数料を支払わなくてはならないため、1万円の売り上げが1万円にならないのです。
仮に、店側が3%の手数料を負担するカードで決済されると、店は2%の増税分と3%の手数料の合計5%の打撃になります。さらに、この政策は1年程度しか行われない見込みで、「そのために読み取り機まで買って振り回されるのはごめんだ」という店は多いことでしょう。
実は、15年にも“天下の愚策”といえる消費税対策が財務省から提案されました。それは、飲食料品(外食も含む)の消費税を還付する制度です。マイナンバーを使い、該当する食品などを購入してカードを端末にかざすと、その記録が政府のデータベースに蓄積され、消費者がインターネットで申請すると還付金を受け取ることができるという仕組みでした。
しかし、仕組みが複雑な上、ネットが使えないお年寄りやカード端末のない店もあり、手続きをしても戻ってくるお金はひとり年間4000円程度ということで、与党から総反発を食らって撤回。財務省は官邸から不信感を抱かれ、消費税増税延期の材料になったともいわれています。
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