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腕時計やクルマが中古でも空前の価格高騰…売って利益が出たら課税されるのか

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
【この記事のキーワード】
腕時計の価格が高騰したことで強盗が相次いでいる
価格高騰により強盗被害が多発する高級腕時計(「Getty Images」より)

 元国税職員さんきゅう倉田です。好きな不動産は「船舶」です。

 今も昔も田舎も都会も、最も人気のある高級腕時計といえば「ロレックス」。そんなロレックスを狙った強盗事件が発生しました。先月、銀座のロレックス専門店「クォーク銀座888店」に白い仮面姿の3人組が押し入り、腕時計など74点(約3億円相当)を奪って逃走しました。また、京都市の時計店では昨年5月に、SNSで集められた強盗団がロレックスなど41点(約6900万円相当)を強奪したことがわかっています。

 今年3月に東京・上野の貴金属店で起きた強盗事件でもロレックスなど45点(約9900万円相当)が奪われ、今月11日にも神奈川・川崎の時計店でも強盗致傷事件が発生するなど、時計を狙った強盗が相次いでいます。これは、移動を制限されたコロナ禍で富裕層の余剰資金の一部が高級腕時計に集中して価格を押し上げたことや、腕時計の換金性の高さが狙われる要因だといわれています。

 数年前、ぼくが初めて腕時計を買う際、知人の経営者に相談したところ、このように言われました。

「さんきゅう、買うならロレックスがええで。ロレックスはずっと人気があるから、使ってもあんまり値段が下がらへんし、プレミアがついて高く売れることもあんで。最初に買うならロレックスや」

 知人はダイヤで文字盤が見えないくらいビカビカに光った時計を輝かせながら教えてくれました。

 結局、ロレックスを買うことはありませんでしたが、今でも印象に残っています。販売台数の少ない高級車と同じように、腕時計も投機の対象となるほど価値が下がらないと学びました。

 多くの高級腕時計にはシリアルナンバーがあって、強盗の被害に遭った腕時計の番号は買取店に共有されていますが、買取窓口でのチェックをすり抜けてしまうこともあり、また一般的な国内の買取店以外に売却する可能性もあります。

 さて、今回はこのような腕時計を売った場合の課税関係について考えたいと思います。

盗品を売って利益を得ると税金がかかるのか

 所得税法の通達には「その収入の起因となった行為が適法であるかどうかを問わない」とあります。平たくいうと、「犯罪によってお金を得ている人も税金は納めなければいけませんよ。強盗だって詐欺だって闇金だって税金は納めてね」といっています。しかし、その犯罪行為を商売として認めるとか認めないといった話はしておらず、あくまで公平性の観点から課税するとしています。

個人が腕時計を売った場合はどうなるのか

 資産を売却して買ったときより高く売れると、税金がかかります。しかし、「生活用動産」であれば課税されません。生活用動産とは、生活に通常必要なもの、例えば、家にある冷蔵庫や車、普段着ている服、家族が遊んだゲームなどです。これらを売って、利益が出ることは稀だと考えられますが、利益が出ても税金を納めたり確定申告をしたりする必要はありません。

 ただし、貴金属や宝石、書画、骨董などで、価格が30万円を超えるものは除かれます。

 一般に、30万円を下回るものを「高級時計」とは言いませんが、30万円を超えるものであっても、上記に該当しなければ生活用動産となります。

「高級時計は特別な場合を除いて、生活用動産で良い」と、はっきりと述べている税理士さんもいます。

 ただし、高級時計のなかには、金を多く使ったものや小さいダイヤモンドを散りばめたものもあるので、注意が必要です。売却する際は税務署や税理士さんに相談しましょう。

自動車が供給不足…中古車の販売で利益が出たら

 新車を注文した複数の友人が、納車まで半年~1年待ちだと言っていました。半導体不足で納品に時間がかかっているようです。

 そのため、中古車市場も活況を呈しています。売却を検討する方もいるでしょう。生活の中で使っていた自動車を売って利益が出ても、前述の通り生活用動産であるため税金はかかりません。確定申告も不要です。

 高級腕時計や自動車を売却して利益が出たときに、税金がどうなるのか心配になると思います。管轄の税務署や国税局電話相談センターであれば無料で相談できます。お金を払って、税理士さんに相談してもよいでしょう。面倒だと感じて放置すると、本来不要であった納税を強いられる可能性もあるので注意しましょう。

(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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