東京経済という民間信用調査会社が年に2回出す要注意企業「300社リスト」(俗に危ない会社300社リストと呼ばれている)に野村証券が入ったことを告げると、野村証券のOBは、そういって顔を紅潮させた。
野村証券といえば、”証券界の雄”であり、バブル時代にはこの世の春を謳歌するように、好業績、高収入を誇った。同社では高卒でお茶汲みをしている女子社員のボーナスが100万円もあった時代だ。
しかし、バブル経済崩壊とともに証券会社は苦境の時代を迎える。株式市場は長期下落相場に突入、本業であった株式手数料では儲からなくなった大手証券は活路を投資信託の販売や社債の引き受けに見出すとともに、経営の舵をグローバル化に切り始めた。
その一方で、株式取引の様相は一変。今や個人投資家のほとんどはネット証券で取引を行っており、野村証券など昔ながらの対面取引を行っている大手証券は、ネット証券への進出に出遅れたこともあり、個人投資家の株式取引が激減した。
失敗したリーマン買収
野村証券も強力に国際業務を推進しグローバル化を進める。その象徴とも言えるのが、08年9月の米国の金融危機の元凶とも言われたリーマン・ショックの主役リーマン・ブラザーズのアジア・欧州部門の買収だった。この買収で、野村証券は一気にグローバル化を進めようとした。しかし、今度は欧州から金融危機の火の手があがった。いわゆるギリシャ問題と言われる欧州債務危機だ。この結果、野村証券の海外部門は継続的に赤字を続けている。
「欧州危機により買収したリーマンはほとんど儲けを生み出していない。その上、元リーマンの社員は外資系のため給与が高い。年収で2000万円を超えるのがゴロゴロしている。その上、複数年契約になっているので、契約期間中は給与を払い続けなければいけない」と野村証券のOBは苦虫を噛み潰したような表情で語る。
こうした業績の低迷が”野村証券経営危機説”を生み出す。米大手格付会社ムーディーズの現在の野村証券の格付けは「Baa2」。もし、2段階の格付け引き下げが行われ「Ba1」となれば、「ジャンク(投資不適格)」になる。
経済情報誌などでは、「野村証券、三菱UFJグループの傘下に」「野村証券に公的資金注入計画」といった刺激的な観測記事が飛び交う。これらを受けて、ネット上では野村証券の経営危機説が山のように書き込まれている。
追い打ちをかけるOBたちの悪事
さらに評判を地に落としたのが、野村証券全盛期のバブル期に甘い汁を吸ったOB連中。オリンパスの不良債権の”飛ばし”を指南し、10年以上にわたる粉飾決算に手を貸した国内M&Aを指南したコンサルタント会社グローバルカンパニーの横尾宣政、羽田拓や海外への飛ばしを指南したアクシーズ・ジャパンの中川昭夫、アクシーズ・アメリカの佐川肇や、人様の年金を詐欺まがいの運用で2000億円も蒸発させたAIJ投資顧問の浅川和彦社長は、すべてバブル期を謳歌した野村証券OBだ。
加えて、証券取引等監視委員会が3月21日に発表した国際石油開発帝石の公募増資に関連した中央三井アセット信託のインサイダー取引問題で、中央三井アセット信託に未公開情報を流していたのは、野村証券の社員であることが明るみに出た。OBもOBなら、現役も現役、”腐っても鯛”ならぬ”腐った野村”の本領発揮というところだろう。