「フリーレント」「家賃保証」にもご用心
「フリーレント」という言葉をご存じだろうか?
これは、3カ月など一定期間、家賃を無料にするというものであるが、これにもカラクリがある。
例えば、家賃相場12万円を15万円に設定し、その代わり3カ月間無料にする。入居者にとっては45万円“得”したことになり、売り手にとっても家賃を上げることで物件の売却価格を高くすることができる。一方、買い手にとっては、その分高い価格で買わされてしまう。
買い手にとって家賃は高いのでいいのでは、と思われるかもしれないが、フリーレントは、例えば「2年間は中途解約不可」などの条件を付けるケースもあるものの、それが過ぎれば入居者にとってはあまりメリットがないので、条件をクリアしたらすぐ退去する可能性が高い。
そうなると、次の入居者を探すことになるが、果たして相場が12万円の物件を15万円で借り手は見つかるだろうか。また、そもそもフリーレント物件には、率直に言えば入居者が入いりにくい物件が多い(だから「無料」を餌にする)。最初の入居者が退去した後は、家賃を下げざるを得なくなる可能性が高いのである。
そのほかには、「家賃保証」というものもある。これは、空室リスクに対して一定の保証料を支払うことで、空室リスクはすべて借り上げ業者に被ってもらうという契約である。一見、魅力的なシステムだが、これにもウラがあって、はじめは家賃を高めに設定して売り切り、そのあとに借り上げ賃料の値引交渉が入ったり、最悪の場合には借り上げ会社ごと潰れてしまうということもある。これが意図的なのか偶然なのかは読者の想像にお任せするが、その後は、言わずもがな、空室リスクはすべて契約者が負わなければならない。
これら2つの例についても、家賃相場さえわかっていれば、買うことのない物件になるはずである。
以上のように、業者の悪質な手口に対抗するには、家賃相場を知ることがいかに大切かがおわかりいただけたであろう。
さらにいうならば、将来売却する際の「出口」も重要だ。前述したように、将来の売却価格が購入価格より低ければ、意味がない。
元本も割り込み、売却すらできない
東京近郊に所在するある物件では、平成8年に1880万円で買ったが、平成24年に売却したら650万円になってしまった。また、新築物件を2300万円で買ったが、思ったより収入が増えなかったため8年後に売却を検討したところ、1350万円まで価値が下がっていることがわかり、その時点で残っていたローン1800万円も返せず、売却をあきらめたという例もある。
こうした事例に対し、きゃさりんさんはこうアドバイスする。
「良い物件をいかに安く買うか、これに尽きます。そのためには、少なくとも物件の売主として事業を行っている業者に相談してはいけません。不良在庫を買わされるだけです。なぜなら、業者の本音は、家賃を高く見せて価格を吊り上げ、売却利益で儲けることだけを考えているからです。つまり、仲介ではなく『物件の売主』である業者と買い手は、利益相反する関係なのです。