購入価格は、期待利回りが8%で、家賃10万円だったので、
・年間家賃収入(10万円×12カ月)÷期待利回り8%=1500万円
である。一方、相場の7万円であれば、
・年間家賃収入(7万円×12カ月)÷期待利回り8%=1050万円
となり、450万円高く買わされたのである。
では、その物件を買った後はどうなったのか?
契約上は入居者であった愛人は、そもそもそこに住んでおらず、事実上は入居者不在で部屋の手入れはまったくしていないボロボロ状態だった。その事実を隠すため、A社は売買契約を締結して物件を引き渡した後に「入居者は賃貸借契約を解約して出ていった」ということにした。
そして、ボロボロの部屋を「(元)入居者の通常使用による自然の損耗なので、売主である当社には瑕疵担保責任は無い」と言い張ったのである。賃貸物件の修繕義務は、入居者の故意・過失によるものは入居者負担だが、通常使用での修繕は物件所有者だ。そのため、(元)入居者である社長の愛人も、修繕責任を逃れる借家契約だったのだ。
Bさんは唖然としたが、次の入居者をすぐに探さなければならない。そして、そのためのリフォーム費用のうち(元)入居者の故意・過失を証明できないリフォーム分は、当然物件購入者であるBさんが負担することになる。高掴みさせられたうえ、入居者もおらず、そのうえリフォーム代も支払わなければならないという、まさに踏んだり蹴ったり状態になってしまったわけである。
家賃の相場を見抜く力
この事例は、最も悪質な手口のひとつだが、ここでポイントなのは、「この物件で家賃10万円は高い」と見抜く力である。業者の悪巧みはわからなくても、「なぜ相場よりも高いのか? 何かウラがある」ということを考え、決して業者の言っていることを鵜呑みにしてはいけないのだ。
家賃相場を調べる方法としては、その周辺エリアの築年数や間取りなど、条件が同じような物件広告をネットなどで探せば、おおよその家賃相場がわかる。ただ、実はこの広告も“ダマし”が多い。部屋を借りる人を集めるために、いかにも安くていい物件があることを見せて、賃貸業者へ連絡をさせる手段なのである。実際に問い合わせがあると、実は火葬場や墓場の隣なので安い、といったネガティブな要素があることを伝え、もっと家賃の高い物件を紹介するという手口である。
つまり、ネット広告に出ている家賃相場よりも、少し上乗せする程度が実際の相場と考えてもいいだろう。
「さらに堅実な方法としては、自分の足で賃貸に強い不動産業者を回り、検討している物件を見せて、いくらで貸せそうかヒアリングを行うことです。おそらく、的確に言ってくれるはずでしょう」(前出のきゃさりんさん)