相続税が発生しないケースで相続トラブルが多い
1月1日から相続税の基礎控除額が縮小され、相続税を負担する層が広がった。基礎控除が「5000万円+1000万円×法定相続人」から、「3000万円+600万円×法定相続人」になり、4割も縮小されたのだ。従来は、法定相続人が1名の場合、保有資産が6000万円を超える場合のみ相続税の納税が必要だったが、現在では基礎控除後の相続資産が3600万円あれば、原則として納税が必要になる。都心に自宅を所有し、老後資金の預貯金として2000万円~3000万円程度があれば、3600万円は簡単に超えるだろう。自分には関係ないと考えず、親、きょうだいと相続についてよく話し合っておきたい。
相続税が発生するなら、事前に資金の用意などが必要になるが、納税の有無にかかわらず、相続トラブルは多い。親の資産を把握していなかったり、きょうだいと意見が食い違ったりした結果、骨肉の争いへ発展することも少なくないのだ。実際、12年度の最高裁判所のデータによると、遺産分割で揉めている案件の32%が相続財産1000万円以下、43%は1000万円超5000万円以下なのだ。つまり、全体の75%は、相続財産が5000万円以下というわけだ。相続トラブルは資産家の遺族に限られたものではなく、相続税のかからないくらいの遺産でも発生するのが現実なのだ。
相続トラブルが起きやすい3つのパターン
では、実際にどんなことでトラブルが生じるのか、よくあるパターンを3つ紹介しよう。
最も当てはまる人が多そうなパターンは、「遺産のほとんどが不動産で分割が困難」という事例だ。まとまった現金があれば分けやすいが、不動産を複数の相続人で相続する場合、売却して現金化する必要が出るなど、手続きが煩雑になりやすい。親の家に同居していたきょうだいがいる場合などは、さらに揉めやすい。同居していた家に住み続けたいと主張しても、ほかのきょうだいが遺産分割を迫ってきた場合、相当な現金がなければ手放さざるを得なくなる。