広告モデルにおける売り上げと費用のバランスの取り方
しかし実際には、広告モデルの事業は図4のようにならず、うまくいったとしても図5のようになっている。
・まず、立ち上げ時期において、売り上げ(青線)が立つようになるまで時間がかかる。サイトを立ち上げるのは早くできるが、広告が取れる媒体として売り上げが立つのには、消費者への100万以上のアクセスが必要になる。媒体によって単位は異なるが、一声100万の消費者からのリーチやアクセスがないと、クライアントとの商談のアポイントも取れない。
・損益分岐点を超えてから、利益が想定ほどは急拡大しない。費用(赤線)は、固定的でなく、売り上げ(青線)を伸ばすためには、変動費がかかり費用も右肩上がりに増えていく。広告の売り上げを伸ばすのには、そのメディアへの視聴者のリーチを増やさなければならない。そのためには、費用をかけてコンテンツを充実させ、そのメディアの広告を出し、ネットマーケティングの手法を使ってサイトに視聴者を誘導しなければならない。
たとえば、女性向けファッション誌などは、派手な割には事業の利益としては大きくない。というのは、発行部数に比例して広告料金、すなわち売り上げが決まるので、発行部数を上げようと電車の吊り広告をうち、有名なタレントをモデルに起用し、人気作家のエッセイを掲載すると、メディアの制作費に多額の費用がかかってしまう。
・最近ではPCよりもモバイルでメディアに接する人が多いので、モバイルのメディアでSNSを使って視聴者を広げるというモデルの提案も多い。しかし、モバイルの広告から購買行動につながる率が悪いので、モバイルメディアでの広告単価はPC向けメディアの1/5~1/10だ。それでビジネスを成り立たせるのは、なかなか難しい。
逆にいうと、上記のような問題点への対応策を準備した新規事業の提案は、有望なものとなる。
たとえば、「ゼクシィ」(リクルート)のような情報誌やフリーペーパーは、コンテンツの主要部分はクライアントの結婚式場や飲食店から提供されるので、損益分岐点を超えてからの制作費は売り上げほど上昇しない。従って、似たビジネスにみえるファッション誌に比べ、うまく走りだしたときの利益力が格段に高い。
また、グーグルは広告料を無限にある検索語ごとにシステムによる入札方式で決めている。そのため、広告費負担能力のあるクライアントからは、営業の手間をかけずにごっそり広告料を取ることができ、費用が上がらずに売り上げを飛躍的に伸ばすことができている。
よくある残念な新規事業提案として、集客施設事業、コンサルタント事業、広告モデルとみてきた。この3つの事業の成功可能性がないといっているのではない。その都度説明してきたように、この事業に固有の一般的な問題点があるので、それに自分たちがきっちり対応できるのであれば、一転してとても大変有望なビジネスとなる。それは、最初に示した図1のようなよくある事業計画に近づける方法もあるだろうし、まったく違う線の形だが儲かるというものでもいいだろう。