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文字通り、渡邉氏は大野氏の「ブレイン」だったわけで、この立場にいる限り、渡邉氏の元にはあらゆる情報が集まってきた。そうした情報は、おそらく「新聞記者」として役立つものでもあったはずだし、実際にそれらを利用してスクープを出し、読売新聞内での立場を固めていったところもあるのだろう。しかし、大野氏の懐にあまりに深く入り込みすぎた結果、渡邉氏の意見がどんどん「大野派閥としての意見」になっていったという面は否めないようだ。
■渡邉恒雄は「権力志向のカタマリ」か?
こういった面だけを見ると、渡邉氏が巨大な権力志向を持ち、時の権力者に取り入るタイプの人間に思えるが、前出の磯部氏にしても、当時渡邉氏と対立していた人物であり、その意見の客観性については考慮すべきだろう。事実、渡邉氏の「権力志向」については違う見方もある。
大野伴睦やその派閥、そして後の中曽根康弘など、渡邉氏が肩入れした人物はいずれも時の絶対的権力者ではなくその対抗勢力であり、彼らを応援することで世の中の動きに自分なりの主張を織り込んできた、という評価も存在するのだ。
本書では策略を巡らせ、剛腕を振るう一方で非常に面倒見がいいなど、渡邉氏の様々な面がエピソードとともにつづられ、単なる「独裁者」ではない、陰陽こもごもの立体的な人物像を見せてくれる。
余談だが、出版元のさくら舎によると、本書は刊行時に読売新聞社から広告掲載を「丁重にお断り」されたという。
本書で書かれていることの中に渡邉氏や読売グループにとってありがたくない内容がある、というよりは、読売側が自主的にボスに対して「気をつかった」ということだろうが、その一方で、東京駅近くの某書店で渡邉氏本人が本書を購入する姿も目撃されており、興味深い。
大正15年生まれ、御年89歳にしてなお読売グループのトップに座り続ける“怪物”は、この本を読んで何を思うのだろうか。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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