しかし、それはまったくの勘違いでした。部下に意見を述べる機会や計画の策定に携わる機会を与えていなかったことに問題があったのです。一方通行で、説明する機会すら十分に設けていませんでした。なぜその目標を達成しなければならないのかという説明も不足していました。そのため、部下に求める要求水準や責任の所在も不明確でした。とにかく、計画を実行することだけを求めていたのです。
「手続的正義」という言葉をご存じでしょうか。正しいプロセスを経て得られた結論は、その結果がどうであれ正しいとみなす正義観のことをいいます。人々が法律に従うのは、この手続的正義に従っているからだと考えられています。人々は結果そのものと同じくらい、プロセスを気にかけることの証左となっています。どんなに崇高で意味のある目標を掲げても、そのプロセスに問題があれば部下は動かないのです。
それに気づいてから、筆者はプロセスを重視するようにしました。計画段階から部下の参画を促し、説明を十分に行い、責任の所在と期待水準を明確に示すよう心がけました。プロセスを重視し、透明化するようにしたところ、部下は積極的に動くようになり、モチベーションは目に見えて向上していきました。その結果、目標を達成できるようになりました。すなわち、筆者はリーダーシップを発揮できるようになったといえます。
このことから手続的正義、つまりプロセスの重要性を学ぶことができました。前述したように、リーダーシップを構成する要素はこれだけではありませんので、あくまでひとつの例として、プロセスを大事にすることをお勧めします。それによって、ますます強力なリーダーシップを発揮してください。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。