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手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

小手先の高ROEや高収益経営が企業を滅ぼす…短期投資家や金融機関を喜ばせるだけ

文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授

競争優位性を磨き差別化するのが利益率向上の最善策

 結局のところ、持続的にROEを改善するためには、本業の利益率を高めるために地道に努力をするしかないのです。経営者や社員が雇われているのはそのためです。では、どうすればよいのか。競合他社に対する競争優位性を磨き差別化し続けるしかありません。もっと簡単にいえば、お客様が喜んでプレミアムを支払いたくなるような商品やサービスを生み出し続けることです。アップル富士重工業などが典型例でしょう。

 そもそも高ROE企業のなかで、似たり寄ったりの商品やサービスで勝負している企業はありません。競争優位性の欠如という根本的な問題を解決せずに、多額の手許現金を株主還元としてばら撒いたり、リキャップCBで資本を減らしたりしたところで、ごまかしにすぎないのです。せいぜい短期的な投資家や金融機関を喜ばせるだけでしょう。

 ROE改善の本丸は、本業の利益率だと認識し、明日から地道に努力しましょう。そのためには、当期純利益を減らす要因にはなりますが、持続的な投資が不可欠です。株主還元に手許資金を大盤振る舞いしている場合ではありません。

 次回は当期純利益というROEの分子であり、非常に投資家に注目される利益指標について批判的に考えていきます。
(文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授)

手島直樹

手島直樹

慶應義塾大学商学部卒業、米ピッツバーグ大学経営大学院MBA。CFA協会認定証券アナリスト、日本アナリスト協会検定会員。アクセンチュア、日産自動車財務部及びIR部を経て、インサイトフィナンシャル株式会社設立。2015年4月より現職。著書に『まだ「ファイナンス理論」を使いますか?-MBA依存症が企業価値を壊す』(2012年、日本経済新聞出版社)、『ROEが奪う競争力-「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』(2015年、日本経済新聞出版社)、『株主に文句を言わせない!バフェットに学ぶ価値創造経営』(2016年、日本経済新聞出版社)。

『ROEが奪う競争力 ―「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』 企業経営の現場での経験と数多くのコンサルティングを通し、ファイナンスの理論と企業の現場とのズレ、経営への活用のポイントを知り尽くした筆者が、本当の企業価値を高める経営の在り方を、具体的な事例を豊富に盛り込みながらわかりやすく解説します。 amazon_associate_logo.jpg

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