「同じことを話していても、この人が言うと素直に耳に入ってくるのに、あの人に言われると反発したくなる」
「この人は博識でいろいろなことを教えてくれるけど、どうも好きになれない」
こんな感覚に覚えはないだろうか。いくら自分の言いたいことを言っても、それ以前に「感じの良さ」がなければ、内容はまったく相手に伝わらない。では、どうすればいいのだろうか。
無言もしくは一言で「感じの良い人だ」と思わせるノウハウを紹介した『話しかけなくていい! 会話術』(CCCメディアハウス)の著者で、多くの芸能人のインタビューを手がける木村隆志氏に、「感じの良さ」の極意を聞いた。
“会話の精神年齢”が下がっている人たち
–今の若い世代はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でコミュニケーションを取る機会が多いので、10年前の若者よりもコミュニケーション能力は上がっているのでしょうか。
木村隆志氏(以下、木村) むしろ、今の若い人のほうがコミュニケーション能力は下がっています。SNSは画面上の会話なので、上滑りのものも多いですよね。とりあえず「いいね、いいね! がんばりなよ!」としておくだけでいい。一番無責任なものです。
「口下手なので、コミュニケーションが苦手」という人も多いですが、むしろ口下手のほうが感じ良く見えますよ。話がうまくなるほど嫌われる……よくしゃべる人ほど、うっとうしいものです。
–よくしゃべる人が1人いて、周りはしらけているのに本人だけが気づいていない……というのは飲み会などでもよく見かける光景ですね。口数の多い人は、なぜうっとうしく感じられるのでしょうか。
木村 そういう人は、主語が「俺」や「私」なんです。「俺がよく見られたい」「俺が場を盛り上げていると思われたい」という感覚です。本人は「俺」を出していないつもりですが、周囲には完全にばれています。
本当にみんなが楽しくしている時、主語は「俺」「私」ではなく「あなた」になっているはずです。会話をしていて「俺」「私」を感じさせる時点で、面倒くさい人だと思われます。雑談は弾まないし、飲み会で気がつけば周りに誰もいなかったり、深い話ができなかったり……。「俺」「私」になるぐらいなら、せめて「私たち」のほうがいいですよね。
コミュニケーションに口数はまったく重要ではなく、大切なのは、ちょっとしたアクションです。多少、わざとらしくてもいいのです。(目の前にある物をどかしながら)こうやって、相手との間にあるものをとっぱらって、「さぁ、話すぞ」とするような。