–余白を残すことが大切なのですね。
木村 焦ってはダメなんです。急いで「俺」「私」をアピールして、すぐに好きになってもらおうなんて、虫がよすぎます。1回目は感じの良さだけを伝えられればOKで、自分の中身を知ってもらうのはその後。それを飛ばして、いきなり中身を伝えようとしても、相手にしてみれば「お前の中身なんて知らないよ」となってしまいます。
印象が良かったからこそ、どんな人なのかを知りたくなるのです。初デートでもそうですが、ちょっと盛り上がればいいのであって、決して大盛り上がりする必要はありません。
また、一回会って、ちょっと話しただけで「嫌い!」「あの人は苦手」と決めつけてしまう人もいますが、それはジャッジが早すぎます。すぐに白黒をつけ、相手を悪者にして自分が楽になりたいだけなのです。無理に相手のことを「白だ!」と見ようとする必要はありませんが、せめてグレーな状態で見続けられる気持ちがあるといいですね。
–グレーではなく真っ黒にしか見えない……そんな破綻した人間関係は、復旧できるものなのでしょうか?
木村 「破綻した」は思い込みなので、復旧できます。好きも嫌いも、思い込みにすぎません。グラフでいえば下がっているタイミングなので、少しずつ上げていけばいいのです。ちょっと会釈をするとか、元気なあいさつをするとか……。しかし、これも焦りは禁物です。私は「今すぐに彼と復縁したい」なんていう恋愛相談を受けることもありますが、最低半年は時間をかける根気があれば、可能性はあります。
「目立ちたい」「頭が良いと思われたい」はNG!
–感じの良い人を思い浮かべると、「人とのコミュニケーションを面倒くさがらず、小さい頃からしっかり場数を踏んできたのだろうな」という人が多いですね。
木村 そういう人は人間関係を楽しめるし、良い意味で自分をパーツにできる人です。「自分は集団の中の1人だ」という感覚で、その中で「目立ちたい」「頭が良いと思われたい」という余計な自我がない。
一方、ネットや読書など1人の趣味が好きで、1人で映画を観に行ったりお酒を飲みに行ったりできる人は、コミュニケーション能力が衰えやすくなってしまいます。自分の見たいものを見て、食べたいものを食べて……そんな自由に過ごす時間が増えると、相手に目を向けることが自然とおろそかになってしまうためです。
ビジネスシーンの場合は、きちんとスーツを着て丁寧に両手で名刺を渡して、という相手を尊重するコミュニケーションの「型」があります。それほど堅苦しくなくてもいいですが、プライベートのシーンでも、相手の名前を呼んだり、感じのいい相づちを打ったり、ちょっとしたことを実践するだけでいいのです。仕事上で自然としている相手への心遣いを、プライベートでも心がける。それだけで、夫婦、親子、恋人、友達など、あらゆる関係性が良くなります。
(構成=石徹白未亜/ライター)