今や企業がFacebookアカウントを持ち、情報発信をすることは珍しくない。しかし、「世の中の流れがそうなっているから」という理由だけで運用し、自社の製品情報や告知を垂れ流すだけになってしまっている会社もまた多いのが実情ではないか。
どうすればFacebookの持つ力を最大限生かし、ビジネスの成果につなげることができるのか。『Facebookを「最強の営業ツール」に変える本』(坂本翔著、技術評論社刊)には、そのヒントが散りばめられている。「今さらFacebookの使い方なんて…」と思わず、参考にしてみてはいかがだろうか。
■Facebook運用のカギは「数を求めない」こと
本書の著者である坂本翔さんは行政書士としての活動のかたわら、Facebookを活用した音楽イベントの集客経験を生かし「SNSコンサルタント」としても活動している。
ところで、企業のFacebookの運用担当者がぶつかる壁の一つに「ファンの数をどう捉えるべきか」というものがある。ファンや友達の数をそれなりに集められているのに売上に結びつかない、という悩みは多くの企業に共通のものだ。
だが、坂本さんは本書のなかで「現代のFacebook活用においては、ただ数が多ければよいというわけではありません」と説く。そもそも「数」を追い求めること自体がナンセンスというわけだ。
なぜ坂本さんはこのような主張をするのか。彼がコンサルティングを手がけたクライアントのなかに、ある対照的な二つのケースがあったという。
かたや「万単位のファンを集めていながら、ターゲットを意識した投稿をまったくしていなかったために、投稿への反応やリーチが少なく、結果的に売り上げにつながらない」というA社。
その一方で「これからFacebookページを作りたい」というB社。坂本さんはページを作るところから関わり、ファン数は千単位に到達したが、それでもA社とはケタが違う。しかし、売り上げ効果を見るとB社の方が顕著だったのだ。
こういうことが起きた理由として、A社はファン数を集めることにこだわりすぎ、「どんな人にファンになってもらいたいのか」という発想が抜け落ちてしまったことが挙げられる。その結果、「お客になってくれないだろう人」ばかりをファンにしてしまい、どんなにFacebook投稿を繰り返しても売上には結びつかなかった。
逆に、B社はファン数こそ少なかったものの、「どんな人に」「どんなメッセージを」届けたいのかというところから逆算した上で、Facebookページをデザインしていった。当然、ついてくれるファンの少なからぬ人がお客にもなってくれた、というわけだ。
坂本さんは本書の中で度々、「ターゲットを絞り込む」ことの重要性について触れている。ターゲットをしっかり絞り込むことができれば、より効果的に投稿を届けるためのベストなタイミングも決まるからだ。
たとえば本書では、架空のケースとして「神戸市のあるレストランに集客するため」のターゲティングについて詳細に解説されている。