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在宅勤務・テレワークでサボっている気になる人は他人の都合に合わせがち?生産性向上の秘訣

文=真島加代/清談社
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「gettyimages」より

 新型コロナウイルスの流行は私たちの生活を一変させた。感染拡大を防ぐために「在宅ワーク」に切り替える企業も増えており、働き方をめぐって戸惑っているビジネスパーソンも少なくないだろう。在宅ワークをしている人たちに話を聞くと、「通勤がないのはいいが、家では集中できない」「家ではサボっているような気になる」「会社にいるときよりも疲れてしまった」など、自宅で仕事をする難しさや悩みを抱えているようだ。

在宅ワークが苦手な人の特徴とは?

『すぐやる!「行動力」を高める“科学的な”方法』(文響社)の著者で、多くの企業で脳を活かす働き方を提案する作業療法士の菅原洋平氏は、在宅ワークが得意な人と苦手な人の特徴について、こう語る。

「職場と家では違うように思えますが、在宅ワークが得意な人は職場でも同じように働いています。自分自身で時間や作業をコントロールできるので、自宅でもしっかり仕事をこなせるのです。一方、『家ではサボっているような気になる』という人は、職場でも他人のペースに合わせて仕事をしていることが多いです」(菅原氏)

 自分の意志で仕事モードに切り替えられる人は環境に左右されないが、環境の変化や周囲の目が仕事のスイッチになっている人は、在宅ワークを苦手と感じるそうだ。特に後者は「電話の対応やメールの即レスなど、相手都合の働き方をしている人が多い」と菅原氏。

「金融機関で働く人に多いのですが、相手がかけてくる電話の対応やメール返信を優先しすぎると、生産的な活動をしていないにもかかわらず“仕事が充実している”と感じる傾向があります。そのため、電話の本数が減る在宅ワークでは仕事を奪われたような感覚に陥り、仕事モードに切り替えられないというケースもありますね」(同)

 まず相手都合の働き方を変えなければ、職場でも在宅でも生産的な仕事をするのは難しいという。一方、仕事を早く終わらせることができる人は“今は仕事を進める時間”と決めると、電話対応やメール返信をストップして自分の作業を優先するそうだ。つまり、在宅ワークによって普段の働き方が露呈してしまうといえる。

 また、菅原氏のもとには“在宅ワーク疲れ”の相談も寄せられるという。

「人間の脳は、目の前のタスクをこなしているときにほかのタスクの邪魔が入ると“疲れ”を感じます。在宅ワークでは、家でやるべきこと(家事)と仕事(業務)が重なり、より脳が疲れやすい状況になります。頭の片隅で『洗い物しなきゃ』なんて考えながら業務を進めると、職場で働くよりも疲れてしまいます」(同)

在宅ワークで生産性をアップさせる秘訣

 では、在宅ワークを効率的に進める方法はなんだろうか。

・「スマホを見ない場所」をつくる

 スマホは娯楽だけでなく、電話対応や業務連絡など仕事にも使える便利なツールだ。周りの目がない在宅ワークでは、用もないのにスマホを触ってしまうという人も多いだろう。そんなときは「スマホを触らない場所」を決めるのがおすすめだ。

「部屋の中を『スマホを使わない作業をする場所』と『スマホを使って作業する場所』に区切ります。作業デスクの周辺にはスマホを持ち込まず、どうしてもスマホを使いたいときは席を立って使う場所まで行く。このように、場所と行動をセットにすると、場所ごとにやるべき作業を分けられるようになります」(同)

 また、スマホ本体を遠ざければすぐに電話に出ることはできなくなるので、必然的に“相手都合の働き方”から脱却できる、という利点もある。

「作業に没頭する1~2時間、電話に出られず業務上の大失敗につながるケースは少ないでしょう。電話の優先度を下げるだけでも、生産性の向上につながりますよ」(同)

・集中を妨げるものを身近に置かない

 自宅では、テレビや本、音楽などさまざまな誘惑に手が伸びて仕事が進まないケースもあるだろう。菅原氏は「まず、テレビをつけているのは自分自身だと自覚してほしい」と指摘する。

「特に独身のひとり暮らしでは、自分以外の人がテレビをつけることはないですよね。では、なぜテレビをつけてしまうかというと、作業デスクにリモコンがあったから。テレビの主電源を切ったり、リモコンをテレビ本体の近くに置いたりしておけば、テレビを見るのが面倒になり、無駄につけることがなくなります」(同)

 菅原氏によると、「誘惑に負けてしまう」という人は在宅ワーク中も自ら情報を取りに行く傾向があるという。

「よく『上司が話しかけてきて仕事が進まない』という相談を受けますが、そういうスタイルがつくられた人は、たとえ上司がいない在宅ワークになっても仕事がはかどらないことが多いです。実は、無意識のうちに職場と同じ環境を再現するために、テレビをつけて余計な情報を取り入れたり、本を読んだりして“仕事が途切れる状況”を自らつくってしまうんです」(同)

 なんとも本末転倒な話だが、「サボり方によってはメリットもある」と菅原氏。

「サボるときは時間を区切ってしっかりサボると、脳もリフレッシュできます。周囲を気にせずサボれる在宅ワークの利点を活かせば、仕事に適した環境を演出できますよ」(同)

「仕事の合間に家事」が一石二鳥の理由

・作業の区切りに“家事”を利用する

 家事の存在が“在宅ワーク疲れ”につながる、と前述したが、菅原氏は「家事と仕事を織り交ぜると、脳の疲労を防げる」とアドバイスを送る。

「集中を“脳が一定の脳波を保つ状態”と仮定すると、時間の基準が3つあります。ひとつの事柄を考えられる時間は、もっとも短くて4分半です。最初に考えていた内容から、別のことを連想するまでにかかる時間は約16分。そして、知的作業に集中できるのは90分が限界といわれています」(同)

 これらの“集中が続く時間”を実務と照らし合わせると、「アイデア出し5分」「調べ物15分」「資料作り90分」と作業を時間で区切れるという。それでも時間を区切るのが苦手という場合は、“途中でもサッと切り上げるのがコツ”だという。

「15分以上パソコンで調べ物をしていると、いつの間にか無関係な内容を検索していたという経験がある人は多いはず。それ以上ダラダラ調べていても時間が流れるだけなので、さっさと調べるのをやめて切り替えるのがベストです。その際、在宅ワークなら時間の区切りごとに、洗い物や洗濯など家事をこなす合わせ技が可能です」(同)

 しかも、家事をこなしている間に直前の15分間で得た情報を脳内で整理して「このワードで調べたら見つかるかも」という“ひらめき”にもつながるので、一石二鳥。家事には生産性を上げる効果が秘められているのだ。

「在宅ワークで実践できる働き方テクニックの中には、通常の職場でも活かせるものがたくさんあります。今回の騒動で初めて在宅ワークをしている人は、この機会に自分に合う働き方を見つけてほしいですね」(同)

 家と職場、場所は違えど働くことに変わりはない。在宅ワークでは、自らの働き方を改革する力が試されているのかもしれない。

(文=真島加代/清談社)

●菅原洋平(すがわら・ようへい)
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許取得。さまざまな病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、脳の機能を活かした人材開発を行うビジネスプランを確立し、企業研修を全国で展開しメディアでも活躍。『「疲れない」が毎日続く! 休み方マネジメント』など、著書多数。

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清談社

せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

『「疲れない」が毎日続く!休み方マネジメント』 脳のムダづかいを減らし、働きながら休息できて仕事の生産性が上がる。ノー残業デー、時短勤務、フレックスタイム制、フリーアドレス、テレワーク……「働き方改革」に振り回されない習慣のつくり方。 amazon_associate_logo.jpg

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