仕事を効率的に速くこなせる人のまわりには、仕事が集まりやすい。「あの人に任せておけば」と評判は上がり、会社からも信頼される。
ところが、こうした人は短期的な業績を上げられるので出世はしていくが、上に行くにつれてだんだんと会社の「お荷物」となってしまうというのだ。
なぜそんなことになってしまうのか?
仕事をこなすのが速い「できる人」が会社をダメにする?
『「できる人」が会社を滅ぼす』(柴田昌冶著、PHP研究所刊)は組織風土・体質改革の現状に警鐘を鳴らすとともに、仕事の意味・目的・価値を考える「真のできる人」になって自分と会社を元気にする方法が書かれた一冊だ。
本書によれば、社内で優秀とされがちな「できる人」は、「どうすれば目の前の仕事で実績を上げられるか」ばかりを追求してしまいがちだと指摘する。
確かに、「どうやるか」「いかにやるか」を考えることは大事だ。
しかし、これは仕事の手段であり、目的ではない。手段ばかりを考えていると、物事の表面をなぞっているに過ぎなくなる。
こうして、仕事をこなすのが速いだけの人は、ただ業務をこなしているだけで、目的を見据えて最適化できなかったり、新たな価値を生み出す人になれないまま出世を重ねていく。
そして、新しい変化に柔軟に対応できるような思考ができず、意思決定を誤って会社の足を引っ張ってしまうことになってしまうのだ。
「できる人」の罠をどのように解決すべきか?
「できる人」が陥りやすい「仕事をさばく」というワナ。これをどうしたら解決できるのか。
それは、意味・目的・価値などを「考え抜く習慣」にあるという。
目の前の仕事に対して「そもそも、この仕事にはどんな意味があるのか。何のためにやるのか。どんな価値を生むのか」を問い直す習慣を身につけるのである。
脳の領域を目一杯使い、目指すものに向かうために課題を本質まで掘り下げ、現状を革新していく。これは、事業全体の方針といった大きな課題だけに限らず、会議や交渉、普段の事務処理まで、さまざまな仕事において求められると著者は語る。
一つひとつの仕事に対し、いかに考え抜く習慣を身に付けることができるかが、「仕事をさばく」ワナから抜け出すカギとなるのだ。
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会社で働いているのは人。一人の意識が変わったところで、企業は変わらないかもしれない。でも、より多くの社員が仕事に対する姿勢を変えれば、組織が変わることもあるだろう。
普段の仕事のやり方を振り返ってみて、仕事をさばくことばかりに意識が向いてしまっているのならば、その仕事の意味など、自分で考えることを意識して仕事に取り組んでみてはどうだろう。社員一人ひとりがこういった意識を持つことが、企業にとって、社員にとっての成長につながるのだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。