この『最強の働き方 世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓』(東洋経済新報社刊)の著者であるムーギー・キム氏は、コンサルティングファームや投資銀行、外資系資産運用会社といったグローバルなフィールドで活躍してきた人物であり、「世界標準で仕事のできる一流のプロフェッショナルたち」から学んできた働き方を本の中で明かしている。
「一流」と聞くと、ある種の特別な能力を持っている人のみが辿り着ける場所であるという印象を持つかもしれない。
ところが本書を読んでみると、特別な素質は必要ないことが分かる。コミュニケーション、姿勢、情熱、心構え、行動、リーダーシップ。それらはいずれも、仕事の基本ができているかどうかによって大きく変わってくる。まず初めの基本ができていれば人はついてくるし、そうでなければ人はついてこないのだ。
■なぜ、できる人はメールを即レスするのか?
「できる人ほどメールを即レスする」という話はビジネス書でもよく書かれているし、仕事の基本として扱われることが多い。では、どうして即レスすることが「仕事ができる」ということにつながるのだろうか?
自分の送ったメールに対してすぐにレスポンスがあると、ちゃんと自分の言うことに対して反応してくれたという安心感が生まれる。信頼はそうした安心感の積み重ねによって醸成されていくものだ。逆に返信が遅くなればなるほど、「なぜすぐに返してくれないのだろう」という不信が湧き出てくる。
ムーギー・キム氏によれば、メールの返信速度に「いますぐできる仕事は片づける」習慣の有無が反映されているのだという。メールの返信速度が遅い人は、仕事の進捗も遅く、デッドラインも破りがち。一方でメールの返信が速い人は、相手の気持ちを汲んで仕事ができ、重要な仕事も任される。
特にコミュニケーションが重要視される仕事においては、メールの返信速度で仕事の力量が図られてしまうことがあるだろう。「メールの返信の速さくらい…」と思っていると、取引先からは「この人が担当だと仕事の進捗が遅くなって大変」と思われてしまうかもしれない。
■なぜメモ魔は仕事ができるのか?
今はメモ代わりに写メを撮影することも珍しくなくなってきているという。しかし、メモを取るスピードが速い人は仕事ができる、というイメージは根強い。本書でも、「できる人ほど、鉄壁のメモとり魔」とある。
ゼネラル・エレクトリック社の最高経営責任者だったジャック・ウェルチ氏は、情報の徹底した共有と、やると言ったことを実行するのが経営の基本だと語ったというが、漏れなくメモをすることは、議論が共有され、実行されるという安心感の基本にあるとムーギー・キム氏は述べる。
しかし、必死にメモを取るのであれば、録音をした方が相手の目から逸らさずに話ができるし、会話も全部記録できるのでは? もしくは先ほど言った写メでも良いのでは? という疑問も浮かぶ。
実はそういった部分ではないところにも「メモを取る」ことは大きな役割を果たす。それは、相手からの信頼されるための手段として機能するのだ。
――仕事ができて信頼される人というのは「この人に任せておけば、言ったことは正確に理解され、漏れなく実行してもらえる」という安心感を与えるもの
(p49より引用)
メモを必死に取る姿勢は、「あなたの話をちゃんと聞いています」ということを伝える上で効果的だ。相手は、あなたがメモを取る姿を見て、「自分が尊重されている」ということを強く実感するだろう。また、メモを取ることで、相手の話や振る舞いを少しでも自分の身にしてやろうという想いも伝えられる。