著:黒柳徹子、糸井重里
祥伝社
黒柳徹子さんと言えば、最近では『徹子の部屋』(テレビ朝日)での、“芸人殺し”とも呼ばれるムチャ振りが話題にのぼるところ。
「何かおもしろいネタを披露してくださるんですって?」と、本人はいたって自然体ながらも、ネタの“ハードルを上げる”一言を放り込む黒柳さんにニヤニヤしてしまうテレビウォッチャーも多いのではないかと思います。
ところで、この番組では“聞き手”として毎回登場するゲストとトークを展開する黒柳さんですが、“話し手”としての素晴らしさはあまり知られていません。
『タマネギのひみつ。』(祥伝社/刊)は、人気サイト『ほぼ日刊イトイ新聞』で行われたコピーライターの糸井重里さんと黒柳さんの対談を書籍化したもの。本書では、普段はホストにまわっている黒柳さんの“ゲスト”としての魅力が存分に発揮されています。
■「誰もマネできない特技」って?
対談の冒頭で、テーブルに出されていたメロンの話題から、『徹子の部屋』でゲストのために用意する軽食の話になった二人。そこから健康に話題は飛び、黒柳さんの骨密度が同世代平均値の120%もあるという話に……。
その頑丈さを示すべく、黒柳さんはユニセフ親善大使として訪れたカンボジアでのエピソードを披露します。それは、ホテルで激しく転倒してアゴを強打しても、まったく骨が折れなかったというもの。黒柳さんいわく、昔から何度転んでも骨が折れたことはないそう。
糸井さんの「(黒柳さんは)いかにも小さいときから転んでそう」というイメージを、「ううん、そんなことない」と即座に否定した黒柳さんは、自分の敏捷さについて語ります。
かつて、ロシアのサーカス団にインタビューをした際に、誘われるがまま「美女がライオンになる」演目にぶっつけ本番で出演し、見事に成功させたそう。しかもその時の服装は動きにくい振袖と草履。そんなシチュエーションでも、瞬間的にステージ上のライオンと入れ替わる離れ業を成功させたのです。
「そうとうの運動神経よ」と誇らしげに自らの敏捷性を語る黒柳さん。自慢ついでに、と、今度は誰にもマネのできない特技の話に。
「まだなにかあるんですか!」と言いつつも、徹子さんに先を促す糸井さんに、黒柳さんは「あのね、わたしは、水中ヨガができるんです」。
「水中ヨガ」とは、名前の通り、水中に浮いた状態で腕を組んだままヨガの態勢を取るというもの。
ヨガの態勢さえ取れればそんなに難しくなさそう、と思ったら大間違い。やってみるとわかりますが、腕も足も動かせないため沈んでしまい、うまくできません。実は、水中でこの態勢を取るのはかつて古式泳法の項目として存在していたのですが、あまりの難しさに今はなくなってしまったのだとか。
この「水中ヨガ」が黒柳さんにはあっさりできてしまったのですが、なぜ黒柳さんにだけできるのかは未だにわからないのだそうです。
その後も黒柳さんと糸井さんの対談は続きますが、普通なら聴いている人が疲れてしまう脱線と飛躍まじりのトークも、黒柳さんが話すとその感性の豊かさと知性、純真な人柄を感じさせる、魅力的なものに思えてくるのが不思議なところ。
本書は、糸井さんと黒柳さんの二度の対談と、その後の往復書簡によって、彼女の独特な話術を堪能するとともに、30年以上の歴史を持つ『徹子の部屋』の裏話も知ることができます。
普段、あまり見ることのない「ゲスト」としての黒柳さんが垣間見える貴重な一冊です。
(文=新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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