本書を読むと、意外な会社がすでに倒産していることがわかる。
例えば、「ひんやりジェルマット」が大ヒットした寝具、畳製品、衣料品を扱っていた中堅メーカーヒラカワコーポレーションは、2016年に自己破産を申請した。
東日本大震災をきっかけに節電意識が高まったことで「ひんやりジェルマット」の需要が拡大し、大きな収益を上げたが、その後の大幅な設備投資に見合う収益を上げることができず、倒産への道を辿った。
また、シュールな設定でブームを巻き起こした絵本「こびとづかん」を出版した長崎出版も、2014年に自己破産をしている。
大ヒットを生み出して一時は売上高16倍となった同社だが、トップが本業以外の投融資でことごとく失敗をしたことが没落の原因だったようだ。
ヒラカワコーポレーションは、本業を拡大しようとした結果の倒産。かたや長崎出版は本業以外の事業に手を出したことで倒産している。
いずれの道も、上手くいっていれば、さらに会社を成長させる経営判断だっただろう。しかし、見通しの甘さによって裏目に出た事例と言えるのかもしれない。
■老舗や新興事業も油断はできない
長くその業界で地位を築いてきた企業も油断はできない。
「ミセスロイド」や「アイスノン」で知られる家庭用品メーカーの白元も2014年に民事再生法を申請している。負債総額は、同年で三番目に大きい254億9400万円。創業から四代目を数え、100年近く続いた老舗企業だが、三代目の社長の頃から身の丈から外れた経営が目につくようになり、徐々に経営が厳しくなっていったようだ。
また、ジーンズの国内トップメーカーだったエドウインは、事業再生ADR(裁判外の紛争解決手続)の末、2014年にスポンサーの伊藤忠商事の全額出資子会社として再出発することになっている。エドウインの場合も、本業以外の野放図な金融取引が経営危機を招いたという。
白元は100年近く、エドウインは創業から数えると70年近い老舗だが、帝国データバンクが保有する企業データベースによれば、老舗企業が上手くいくためには、3つのポイントがあるという。
1.事業継承(社長交代)の重要性
2.取引先との友好な関係
3.番頭の存在
事業継承が何度も行われると初代の経営理念が希薄になり、本来あったはずのビジネスマインドが継承されない。本業以外に手を出したり、過剰な設備投資や事業拡大に乗り出したりする三代目、四代目は、そこで道を誤るケースが多いようだ。
取引先との友好な関係については、代替わりが起こると取引先に甘く見られたり、逆に新社長が取引先に厳しく当たるようになり、信頼関係が崩れることがあるという。
さらに、老舗では同族での事業継承が行われるケースが少なくない。するとガバナンスが働きにくくなる側面があるという。
そんな状況において重要な役割を果たすのが、上司部下、主従といった関係とは一線を引いて意見を具申できる「番頭」の存在なのだと著者は述べる。