近年、企業の社長就任の年齢に若返りの傾向が見られる。
2017年、DMM.comの社長が56歳の亀山敬司氏から34歳の片桐孝憲氏にバトンタッチした。また、2015年には出版大手であるカドカワの社長が46歳で、マイクロソフトの社長が44歳で、それぞれ就任している。
環境変化が速く、ビジネスモデルの短命化が激しい中で、企業の「連続の成長」は極めて難しくなっている。そこで企業が求めているのが破壊的イノベーションを実現し、新たなスタイルのリーダーシップを発揮できる「40歳社長」だ。
『40歳が社長になる日』(岡島悦子著、幻冬舎刊)では、なぜ今、40歳社長が求められているのか。
また経営者はどう40歳社長を育成すればよいか、上を目指すビジネスパーソンはどんなスキルを備えるべきかが解説されている。
■「40歳社長」が求められるのはなぜか?
これからの経営トップは、環境変化のスピードに対応し、様々なテクノロジーを柔軟に活用できるスキルと感性が必要だ。
現在の30~40代は、コンピュータやスマホ、インターネット、ビッグデータなどのテクノロジーに若いころから自然に触れている。つまり、上の世代にはないITリテラシーを持った「デジタル・ネイティブ世代」であり、これからの経営に必要な「破壊的イノベーション」を実現する潜在的資質をすでに備えているのだ。
数々の企業のプロジェクトに参画する著者は、「先見性のある企業では、すでに40歳社長を輩出するためのサクセッションプランニング(後継者育成計画)が始まっている」と述べる。
多くの企業で40歳社長を輩出しようという潮流は、そこで働くあらゆる年代のビジネスパーソンのキャリアプランニングにも大きく関係するだろう。
後継者育成には10年は必要だ。そうなると30代の若手人材は、早いうちから企業側にそのポテンシャルと能力を見定められ選別されることになる。
厳しい立場に置かれるのは、現時点で40代の人材だ。この先、自分より年下の社長や経営幹部の下で働く可能性があることを覚悟しておいたほうがいいだろう。
■イノベーションを創出する「新たなリーダーシップ」の像
顧客の多様化はビジネス戦略ビジョンが描きにくくさせている。そのため、誰か一人の発想に基づいたビジョンを打ち立てるのはリスクがある。
これまでのリーダーシップは、リーダーが圧倒的に魅力的なビジョンを示し、メンバーを引っ張り、顧客に価値を提供していくという構造だった。しかし、イノベーションを創出するには従来のリーダーシップでは成果が出にくいと著者は語る。
その上で、今、求められているのは、「顧客共創型リーダーシップ」だという。
顧客ニーズを的確に掴むには、店舗や商品、サービスを顧客と「共創」する。必要な顧客インサイトを熟知しているのは最前線の現場の人間だ。
リーダーは、大きな方向性を決め、顧客インサイトを引き出せる多種類の専門家を現場に配置し、その最前線の現場環境整備にコミットする。そして、そこから抽出された顧客インサイトに基づいてビジョンをつくり上げていく。
たとえば、博多マルイは、出店にあたり400回も顧客と直接コミュニケーションを交わす「お客様企画会議」を実施した。その結果、1階2階が食料品売場という規定概念を覆す店舗になり、人気を博しているという。