しかし、「部下が思うように動いてくれない」「部下が育たない」「チームとして成果が上がらない」という悩みを抱えている人も多いだろう。
そんな悩みを解消してくれる一冊が『ケンタッキー流部下の動かし方』(森泰造著、あさ出版刊)だ。
ケンタッキーは、2015年に行った新人社員育成改革によって2年以内の離職者ゼロを達成している。正社員の半数近くが3年以内で辞めていくのがほとんどである飲食業界において、この数字は驚異的な成果だ。
離職者ゼロという数字からは、マネジメント側が従業員を上手に育て、従業員側もマネジメント層を信頼していることが容易に想像できる。その育成改革の中核をなしたのが、著者の森氏だ。
著者によれば、リーダーには
・「自分のやり方にこだわるタイプ」
・「厳しさが前面に出てしまうタイプ」
・「やさしすぎるタイプ」
・「短期的な結果を大切にするタイプ」
・「上から目線になるタイプ」
という、5つがあるという。
本書では、自分がどのタイプかわかるチェックリストとともに、それぞれのタイプのリーダーが意識すべきことが紹介されている。その中から、部下を動かすポイントをいくつか取り上げてみよう。
■優秀なプレイヤーだった人ほど部下が動かせない?
自身がプレイヤーとして実績を残していた人ほど「一応の成果は出ているけれど部下がついてこない」「チームとして機能しない」といった事態に陥ることがある。それは、「結局、自分でやったほうが早い」と考えてしまうからだ。
マネジメントする側の人間が、まず押さえておかないといけないのは、プレイヤーとリーダーの違いだ。プレイヤーは「自らが動いて成果をあげる人」だが、リーダーの役割は「部下を動かして成果をあげる組織やチームにする人」だということを肝に命じておくべきだ。
また、いちいち指示をするのも、部下を動かせないリーダーの特徴の1つだ。
著者は、リーダー向けの研修では必ず「アドバイスしたら終わりだ」と伝えているという。
リーダーがアドバイスをした途端、部下は考えることをやめてしまい、「指示を待つことが仕事」という部下が出来上がってしまう。
とはいえ、指示をしないと不安に感じるリーダーも多いだろう。そこで必要なのは、やり方を教える「ティーチング」ではなく、部下が解決法を自分で見つける「コーチング&サポート」だ。
部下からアドバイスを求められたら、状況や理解できていない点をヒアリングし、「その問題を解決するにはどうすればいいか」「その目的のためにできることは何か」を質問し、部下自身に考えさせる。そうやって「自分から動く部下」を育てていくことが必要なのだという。
たとえ部下からアドバイスを求めてこなくても「何か困っていることはないか?」と、問題や課題を引き出すコミュニケーションをとり、答えの部分は部下自身に考えさせるようにすれば、徐々に「自分から動く部下」を育てていくことはできるだろう。