山崎 新規のサービスを立ち上げるということ自体、どういうことかまったくわかっていませんでしたからつらい時もありました。ただ、ありがたいことに、私以外のチームメンバーは、エンジニアもデザイナーも、サイバーエージェントを代表する精鋭の方々でした。そういうキャリアも実力もある強力なメンバーの中で、右も左もわからない自分にできることは何かを考えた時に、皆さんがしっかり作業できるようなチーム環境をつくることだと思いました。それで、チームの環境づくりを軸に、わからないなりにも、とにかくがむしゃらに頑張りました。
●収益よりも「ユーザーファースト」
—アメーバピグは今や利用者数が1300万人を超えるサービスへと成長していますが、当初ここまで成功することは、ある程度予想していたのでしょうか?
山崎 当時はユーザーサービスを企画・開発するプロデューサーでしたので、ひたすらユーザーに対して「どのようなアバターサービスを提供したらおもしろいと思ってもらえるのか」ということに向き合っていました。しかも、お恥ずかしながら、当時の私は事業の収益見通しのような部分まで十分に管理できていませんでしたので、社長の藤田をはじめ、周りの事業部メンバーが力強くサポートしてくれたのではないかと思っています。ですから、会員数や収益がこれほどの規模にまで成長するとは、当時はまったく想像もしていませんでした。
–通常は、収益計画を軸に事業化を検討するのではないのですか?
山崎 Amebaのサービスづくりの基本方針は、マネタイズ、つまり収益事業化できるかということを考えずに、とにかくユーザーに対しておもしろいもの、楽しめるものを提供しする、そこに人が集まってくれば後からマネタイズの方法はいくらでもあるというものです。ですので、アメーバピグもユーザーがアバターをつくり、着せ替えて楽しめる最低限の着せ替え数を用意しただけでサービスを開始しました。部屋に家具を並べるという仕組みはつくりましたが、最初から商品ラインナップが豊富だったわけではありません。徐々に人が集まってくるのを確認し、ユーザーの要望を採り入れながら、商品ラインナップを増やしていきました。
–貴社はほかにも、一般の人が思いつかないような奇抜なネットサービスをたくさん生み出していますが、秘訣は何でしょうか?
山崎 徹底的に「ユーザーファースト」にこだわって商品企画をしているということではないでしょうか。今ユーザーが求めているものは何か、それに応えることが最も大事なことなのです。つまり、事業としてどのように収益を上げていくか、そういう観点からはこうしたサービスは生まれないと思います。例えば、2012年の夏頃は、スマホの普及に伴い、各社からさまざまなスマホ向けの新しいサービスやアプリが発表されました。がそういう市場環境の中で、当社でも数十ものサービスを開発提供したのですが、その中のひとつのサービスとして、私はユーザーがネット上で独り言をつぶやくというサービス「きいてよ!ミルチョ」を開始したわけです。
このサービスの企画に際しては、「今、ユーザーがおもしろいと思うサービスは何だろう?」「これを出したらユーザーは使ってくれるだろうか?」というところからスタートして、最終的に「ひとりごとをひたすら言えるというサービスがおもしろいのではないか」というところにたどり着いたわけです。つまり、企画の時に、それを事業としてどのように大きくするか、そこで収益を上げられるのかというような話はまったくしませんでしたね。
–振り返ってみて、これほどまでにアメーバピグが成功した理由はなんだと思いますか?