個人的には、ファッションは本人に似合っているほど「なんで?」という違和感がなくなるので、ビジネスでもプライベートでも自分に合った服装が好ましいと思う。しかし、それとは別に「自分が着たいものを着たい」という気持ちも大切だ。
そこで、「似合う」と「着たい」の間にズレがある場合、プライベートであれば「着たい」を優先する日があってもいいだろう。常に自分の気持ちを押し殺す必要はない。
ただし、ビジネスシーンとなれば話は別だ。職場や取引先などの空間で「着たい」優先では、「まわりが見えない人」「自分にしか関心がない人」とみなされてしまう。ビジネスシーンでは服装ではなく仕事が主役だ。仕事以上に服装で目立ってしまうのは、やはり損でしかない。口を開く前に勝負が決まってしまっては、あまりにもったいない。
見た目に“ワル”を醸し出すのはNG?
“マフィアファッション”は貴乃花親方に限らず、麻生太郎副総理兼財務大臣もやっていた。
2013年2月にロシアで開かれたG20(20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議)に、黒のロングコートにハットを斜めにかぶったファッションで出席し、「マフィアスタイル」「日本のアル・カポネ」と話題になったのだ。
若者のストリートファッションから、中年、壮年男性のマフィアファッションまで、“ワル”には抗いがたい魅力があるのだろう。“ワル”は力や強さも感じさせるため、男性がメロメロになる気持ちもわかる。かつて、男性ファッション誌「LEON」(主婦と生活社)が提唱してブームとなったのも、「ちょい不良(ワル)オヤジ」だった。
なお、「自分はマフィアファッションなんてしないから」という人も、油断は禁物だ。ビジネスシーンなのに、やたらと目立つ金ピカの腕時計をしていたり、夏場に乳首が浮くほどピタピタのワイシャツやピチピチのズボンを着ていたりする人も、部類としてはマフィアファッションと同様の“ワル”にあたる。共通するのは、「普通のいい子ちゃんとは違うぜ」というメッセージを発したい点だろう。
プライベートであれば、ストリートだろうがマフィアだろうが、いくらでも“ワル”を目指せばいい。しかし、ビジネスシーンでは服装で“ワル”を演出するのではなく、「品行方正で優等生の生徒会長が、実は陰の番長だった」というような、「服装や身なり、たたずまいはきちんと正統派、それなのにやることはびっくりするほどえげつない」という方面の“ワル”を目指すことをおすすめしたい。少なくとも、そうしたほうがモテる。
いかに“ワル”を見た目に出さないか。そう腐心する人こそ、自分のあくどさを知っている本物の“ワル”だろう。
(文=石徹白未亜/ライター)
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第!