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なぜ世界最高峰に社員が登頂?あの会社のユニーク&高コストな社員教育法とは?

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経営者仲間にも、こうした貴社独特の取り組みに批判的な方が多かったようですね。

石川 以前は、賛同してくれる仲間は一人もいませんでしたね。「経営者としての方向性が間違っているのではないか」「南極に行く前に、経営者としてほかにやるべきことがあるだろう」と批判的でしたよ。そこで、私は以前南極に行く時にそういう嫌みを言う会社の社旗を持っていって、南極点でその社旗と共に撮影して、記念に渡すわけですよ。そうすると、社長室などに飾ってくれます。そういうようにして、仲間を啓蒙してきました。

–現在では、そうした社員育成手法が、少しずつ経営者の間でも認められてきたということでしょうか?

石川 まだまだですね。「自分の会社も参加させてくれ」というところはありません。「事故が起きたらどうするのか?」そういう批判が和らいだ程度です。

 社会に役立つ人を育て、社会に送り出すことは、企業の使命だと思っています。“経営の神様”といわれるパナソニック創業者・松下幸之助さんは、「企業の重要なことは収益を上げることだけれども、収益を地域の人たちに還元することはもっと大事だ」と言っていますが、私はそれに、地球のため、日本のため、会社のため、みんなのために役立つ人材を育てるということを加えたい。でも今は、松下さんの言った“収益を上げる”ということだけが独り歩きしているような気がします。

 経営者であれば誰でも“企業は人なり”と言いますが、どのように人を育てるかというその手法はそれぞれ違います。

 例えば、売上高100億円以上の企業ではリスクマネジメントが確立されていて、会社が社員にアドベンチャーの機会を与え、その資金援助をすること自体がリスクです。つまり、事故が起きたときのリスクですね。そういう企業に、社員にアドベンチャーを体験させ、それによって大きく成長させるという私どもの手法を納得してもらい、理解を求めることは難しいことだという認識はあります。

●29歳で破綻寸前の会社社長に

–石川代表は1977年、29歳の時に破綻寸前で当時誰も引き受け手がいなかった現在のDACグループの母体になった、デイリースポーツ案内広告社の社長に就任されましたが、その経緯について教えていただけますか?

石川 常識で考えれば、借金のある会社を背負うよりも、自分で新しく事業を始めたほうが危険負担は少ないわけです。でも、そのようには考えませんでしたね。まず頭に浮かんだのは、「そこで働いている人たちの人生はどうなるのか?」ということ。当時は、「今の会社が嫌なら会社を辞めて、ほかの仕事を探せばよい」という時代ではありませんでした。一所懸命やれば会社も大きくなり、自分たちも豊かになる、みんながそういう共通の価値観を持っていた時代でしたね。

 だから、社長を引き受けたのは、そこで働く仲間のことを考えたからです。そして、社長を引き受けた時に、「社員を大事にしよう」という私の人間第一主義の土台が出来上がったと思っています。

 それから、この会社の創立記念日は、私の誕生日と同じ10月1日。しかも、親会社であるデイリースポーツの創刊は、私が生まれた昭和23年。何か運命的なものを感じましたね。まさに、神様がこの会社を引き受けろと言っているようでした。

–社長就任直後、120名いた社員が、わずか16名になってしまったそうですね。

石川 社長に就任した10月1日の朝、全社員を前に「給料は絶対に遅配しない」「手形を一切切らない」「日曜日は必ず休みにする」など10の約束をし、これからみんなで頑張ろうと誓いました。みんなの顔を見渡すと一緒に頑張ってくれそうで安心しました。

BusinessJournal編集部

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