しかし、社長室に戻ったら、後ろからついてきた7人の社員から封筒を渡されたのです。そこには「辞表」と書いてありました。社長としての初日は、その7人を説得するのが仕事でした。
その後1カ月で、120人いた社員のうち104人が退社しました。そんなある日、あまりのストレスで、血の小便が出た。そのままトイレにこもって2時間くらい悩みましたね。「みんなのために社長を引き受けたのに、どうして誰もついてこないのか?」「どうして裏切るのか?」と。当時は、とにかく毎日辞めていく社員を責めていましたね。
でも、ある時に「自分が社員でも、こういう状況ではついていかないだろう」と、初めて辞めていく社員の気持ちに思い至ることができました。そこで、残った16人に、「社長として立て直せると思ったけれども、その力はなかった。みんなもいい会社を見つけて再就職してくれ」と話しました。すると彼らから、「私たちは石川さんと仕事がしたくて残ったわけだから、石川さんが辞めないなら自分たちも辞めない」という声が上がったわけです。
●社員全員対象の海外研修
–貴社の方針として、でき得る限り最高の教育機会を社員に与えるというものがありますが、セブンサミットプロジェクトのほかにも、社員教育面や組織活性化の観点で、独特の取り組みなどはありますか?
石川 社員全員を対象にした海外研修を行っています。海外研修では、グローバルなものの見方、考え方を勉強させています。そこで社員は、日本人がものを見るときの物差しが、海外の人のそれとは違うということを体感します。
例えば、日本人は「日本が中国や韓国に負けることはない」と思っています。でも、グローバルな物差しで測ると、アジアで1番は中国で、2番は韓国です。日本は10番にも入らない。もちろん日本にも素晴らしいところはたくさんありますが、グローバル基準で活躍しなければダメですね。
私は明日から、年間営業成績優秀者12人とスペインに行き、レアル・マドリードのサッカーの試合を観戦します。そして、サグラダ・ファミリア教会では、工事責任者の外尾悦郎氏に教会の中を案内してもらって、ガウディから始まる建築学の歴史を勉強します。レアル・マドリードのサッカーの試合を観戦するというと物見遊山のように言う人もいますが、実際に現地で試合を観戦するということは、ある意味の体験学習です。そのようにして、世界各地でグローバル基準を社員に勉強させています。
–若いビジネスマンの方々に、アドバイスをお願いします。
石川 私の友人が地方の郵便局の局長になった時に挨拶に行った際、「お祝いに何が欲しい?」と聞いたら、「暑中見舞い用のはがきを買い取って、石川さんの会社の力で販売してくれないか?」と言われました。そこで私は20万枚買い、それを会社に戻って報告したら、役員たちは「20万枚もの暑中見舞いなんて売れるわけない」と非難囂々でした。