「投資」と言われて真っ先に浮かぶジャンルは何だろうか。近年、仮想通貨や不動産への投資が話題になっているが、やはり王道は「株式投資」だろう。
そんな株式投資の情報源を、新聞やニュースに頼っている人も多い。しかし、株式に関する情報源として最強と言えるのは「会社四季報」だ。
20年以上、機関投資家営業として活躍してきた渡辺清二氏は、その理由に「誰でも手に入れられること」「上場銘柄のすべての情報がわかる網羅性」「長年出版され続けている継続性」を挙げている。
そんな渡辺氏が上梓した『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』(東洋経済新報社刊)には、難しいイメージのある「会社四季報」の読み解き方や活用法が解説されている。
本書から、会社四季報を読む際のポイントを紹介しよう。
忙しいビジネスパーソンのための「会社四季報」を読むポイント
会社四季報を「銘柄を調べるための辞書」のようなものだと思っている人は多い。しかし、読むべきポイントさえ押さえておけば、最強の情報源として大いに役立つ。
とはいえ、会社四季報は2000ページもあり、読破するのにはかなり根気がいる。「会社四季報」は、ひとつの銘柄を14のブロックに分けて情報を記載しているが、著者は特に5つのブロックに目を通すことを勧めている。
・証券コードと会社名が記載されている「自己紹介」欄
・「業績予想記事・材料記事欄」(コメント欄)
・「財務」と「キャッシュフロー」の欄
・「業績」欄
・「チャート」
この5つのポイントを押さえておけば、銘柄の成長性、安全性を含む全体像は見えてくるという。
また、巻頭3ページの「各号のポイント」も重要で、特に「市場別決算業績集計表」は必読。上場会社全体の業績が把握でき、全体像と平均値を知ることができる四季報の要点だからだ。
四季報初心者は、これらのポイントを押さえつつ、まずは気になる銘柄をチェックして慣れていくといいだろう。
意外に奥が深い「コメント欄」
四季報を読む人の中は、「記事・材料記事欄」(コメント欄)だけを片っ端から拾い読みする人も多いという。
このブロックには、冒頭と中ほどの2カ所に、数文字の「見出し」がある。見出しが【絶好調】【飛躍】【最高益】【増配】【上振れ】などであれば、プラスイメージ。【軟調】【増益幅縮小】【減収減益】【不透明】【ゼロ圏】などであれば、マイナスイメージといったように、一目でその銘柄の状況が把握できるようになっている。
ただ、コメント欄にはあまり知られていないこともあるという。前半の見出しは「原則として今期予想」、後半は「会社の中長期的な成長に関するトピックス」なのだ。
また、注意したいのは、たとえばコメントが【飛躍】であっても、業績が「飛躍」して株価もすでに「飛躍」してしまっていたら、上限余地が限られるケースがあったりすることだ。
著者は特に、後半のコメントを重視するという。後半には、会社の構造的変化などの大きな動きが後半のコメントに書かれることが多いからだ。ただし、著者は「コメントは当たる、当たらないで議論するのではなく“参考意見”としてとらえるのがよい」と述べている。
「テンバガー」を狙う
本書では、10倍上がる株、いわゆる「テンバガー」探しのノウハウや考え方が紹介されている。
長年、機関投資営業として市場を見てきた著者曰く、10倍株になる可能性の高い銘柄には4つのポイントがあるという。
ポイント1.増収率が高い=4年で売上高2倍
ポイント2.売上高営業利益が10%以上
ポイント3.オーナー企業
ポイント4.上場5年以内
会社四季報を見れば「3」以外の情報はすぐにわかる。しかし、営業利益率(%)も「営業利益÷売上高×100」というシンプルな計算ですぐに数字が出せる。
言い換えると、「急成長していて」「本業で稼ぐ力があり」「筆頭株主の人物像が把握できて」「若い企業で将来有望」な銘柄は10倍株としての可能性を秘めているということになる。
四季報には、まだ世間的に知られていない会社の情報も数多く記載されている。『会社四季報』2018年1集新春号には、「時価総額の10年前比較ランキング」が特集として掲載された。堂々の1位は、トレーニングジムなどを運営するRIZAPグループで時価総額の倍率は238.8倍だ。
まだまだ株価が安い無名な銘柄でも、10売株、100倍株に化ける可能性は十分にある。あくまで投資は個人の責任だが、本書を、四季報を読みこなして「テンバガー」を狙うための参考にしてみるのもいいかもしれない。
(ライター:大村佑介)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。