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日本人が弱い「伝統」という言葉。でもこれ、一体何なの?

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日本人が弱い「伝統」という言葉。でもこれ、一体何なの?の画像1※画像:『「日本の伝統」という幻想』(柏書房刊)

 日本人は「伝統」という言葉に弱い。例えば、「江戸」や「京都」といった言葉が出てくると途端に伝統感が出てきてブランド化する。

 だが、見方を変えれば、私たちはこの「伝統」という言葉に振り回されているとも言える。そんなことにならないためにも「その伝統は、誰が、なんのために、どういうスタンスで主張しているのか?」も含めて読み取る能力である伝統リテラシーを身につけることが必要だろう。

 『「日本の伝統」という幻想』(柏書房刊)は、放送作家の藤井青銅氏が、「伝統ビジネス」と「伝統マウンティング」の2つをキーワードに、「伝統」を盾にした偽りの権威に振り回されないためのリテラシーを身につけるための術を紹介している。

 伝統とは一体何か。それは、「こうやった方がうまくいく」「こうやると楽しい」「こうあってほしい」という知恵と経験と思惑が加えられ、年月を経てしだいに積み重なり、整えられたもの。それが多くの人々に受け入れられ続けたからこそ、「伝統」と呼ばれるようになる。 そこで藤井氏は、4つの伝統の法則を挙げている。

■伝統の第1法則
「人は、自分が生まれた時にあるものは、みんな大昔から続いてきた伝統だと思う」

 人間の認識は曖昧なもの。古くから続いているものは価値があるように思ってしまうし、そして自分が生まれた時にすでに定着しているものは、古くからあるものだと考えてしまう。もちろん、昔からあるものもあるだろう。だが、明治時代に始まったものもあれば、実は自分が生まれる10年前に始まったものもあるかもしれない。そういったものも全部ひっくるめて「日本古来の伝統」だと人は思ってしまいがちになると藤井氏は指摘する。

■伝統の第2法則
「伝統は自ら過去に遡っていく」

 老舗感の強いデザインの店舗、あえて難しい旧字を使う儀式や制度、今では使わない古い言い回しを使うなど。「伝統」を意識すると無意識にそうなってしまうもの。だが、本当に長く続いてきているものは、時代の環境の変化に対応して生き残っているはず。時代に合わせて改良を重ねてきたからこそ今に至っているのに、伝統感を強く出すとなぜか過去に遡るのである。

■伝統の第3法則
「人は自分がいま見ているものが、開始当時から不変のまま続いてきた伝統だと思う」

 伝統を届ける側も、そして受け取る側も、この意識は存在しているはずだ。より古く、連綿と続いてきて今、自分の目の前にあるのだ、と思い込みたくなる。

■伝統の第4法則
「誰かにメリットがある伝統は、長く続く」

 「伝統」は人が生きやすくするために作った決めごとの集積だが、そのメリットは生々しく露骨な言い方をすると、「発信者側にメリットがある伝統は長く続く」となる。

 例えば金銭メリット。いくら素晴らしい「日本の伝統」でも、商売として成立しなければ長く続かない。だからこそその「伝統」を維持する団体や主体がいかに儲かるかが鍵となる。また、既得権益を守るために続けている伝統というケースも生まれているという。

 続いて、権威性メリット。「伝統マウンティング」である。長く続いた伝統はありがたい感じがし、一種の権威を帯び、その権威がメリットとなる人たちがいる。自分一人ではなく長い年月と先人たちを背負っているので、「伝統」という言葉を使うと、相手を言い聞かせやすく、使い勝手がいいと藤井氏は述べる。

 これらの法則から「伝統」はつくられる。冒頭の「江戸」や「京都」といった言葉を使うことで伝統感が出てくるのもそうであり、対立構造を作ることによって伝統を作ることもできるのだ。

 伝統リテラシーは、「その伝統って、本当?」と疑問に思うことができれば身につくもの。振り回されることなく、楽しむためにも本書をきっかけに伝統について考えてみてはどうだろう。
(新刊JP編集部)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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