たくさん本を読みたい人にとっては、図書館はなくてはならない場所だ。しかし、時には探している本のタイトルがうろ覚えであったり、ど忘れしてしまったりするときもある。
あの本のタイトルなんだっけ。こんな雰囲気で、中身はこんな感じで…。
そんなあやふやな質問に真摯に答えてくれるのが、図書館の司書さんだ。図書館の役割の一つに「レファレンス」がある。これは、利用者が探している「情報」にたどりつけるよう、司書がお手伝いをすることを指す。
覚え違いは時に思わぬ「名タイトル」を生む。
『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(講談社刊)は、福井県立図書館のレファレンスサービスに寄せられた、ユニークな「覚え違いタイトル」を集めた一冊。福井県立図書館はホームページでこの「覚え違いタイトル集」を公開。SNSでバズったりもしているので、見たことがある人もいるはずだ。
本書のページを開くと、思わず吹き出してしまう覚え違いタイトルが飛び出してくる。
●「夏目漱石の『僕ちゃん』お借りできます?」
これに対し、司書さんは「『坊ちゃん』でよろしいですね」と回答。古典的名作が、現代風に可愛らしくなってしまった印象だ。
●「『下町のロボット』ってありますか?」
この質問を聞いたとき、司書さんは聞き間違いかと思ったそう。ドラマ化もされた池井戸潤さんの小説『下町ロケット』が正解。
●「『ゴリラ爺さん』ありますか?」
なんとも強そうなお爺さんだが、正解は『ゴリオ爺さん』。19世紀のパリ社交界を描いた小説だ。「そんな華やかな世界に年老いたゴリラがいたらシュールですね」とは司書さん談。
●「『おい桐島、お前部活やめるのか?』ある?」
これは朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』のこと。実は本作の中に、桐島本人は一切登場しない。
●「ドラマ化した『私、残業しません』って本ありますか?」
これは朱野帰子さんの『わたし、定時で帰ります。』のこと。真逆の言葉だが意味は同じだ。
他にもずらりと覚え違いタイトルが並ぶ。さらに、問い合わせの中には、あやふやながらもタイトルが出てくるケースだけではなく、「あんな感じ」というより漠然としたものもあるようだ。
●「偏差値40の女の子がなんかした本あったじゃないですか?」
これは坪田信貴さんの『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』、通称「ビリギャル」のこと。この質問を受けた司書さんは、この本が彼女の自伝だといつの間にか思い込んでいたのだとか。正しくは、彼女が通っていた塾の先生が書いたノンフィクションだ。
本書を通して光が当たるのが図書館の「司書」という仕事。普段どんな仕事をしているのか、図書館にお世話になっている人でなくても気になるところを説明してくれている。「旅行をすれば図書館に立ち寄る」などの司書の“生態”についても知ることができる。
図書館がより身近に、そして行くのが楽しみになる一冊だ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。