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甲子園最多勝監督の指導の秘密…智辯和歌山野球部の練習に他校の監督が唖然とする理由

文=小川隆行/フリーライター

「僕は古い人間なんで今みたいになんでもかんでも(スパルタ的指導法が)あかんというのがほんまに子供にとってええのかっていうのはずっと思ってます」

 本書では、高嶋氏が教え子の岡田俊哉(現・中日ドラゴンズ)に対し、思い余って“足が出た”際のやり取りが描かれている。詳しくは本書に譲るが、いいか悪いかは別にして、体罰の後で高嶋氏が取った行動はスパルタ指導のあるべき姿だと感じさせられた。

“勝ってなんぼ”を貫いた高嶋野球

 高校野球の監督には、ある種のイメージがある。たとえば、明徳義塾高校の馬淵史郎監督は「戦略家」であり、大阪桐蔭高校の西谷浩一監督なら「個別指導」だ。両者とも、言葉で選手の心をつかんでいる。そんななか、高嶋氏の指導法は異彩を放つ。

「打撃指導でもシンプルなことしか言いません。名言を言うわけでもない。『打て、抑えろ、勝て』と。『勉強したい』とやってきた他校の監督も『え?』という顔をしています。

 とにかく、グラウンドで見せる勝利への執念と、選手を常に見ているその姿勢で、選手との間の信頼関係をつくってきた人だと思います。また、それだけ見られているから、選手たちに納得感があるのです。悪い意味ではなく、結果論から選手に『何が足りないのか』と考えさせる指導でもあったと思います」(谷上氏)

 昨今の高校野球は「勝利至上主義だ」「本来は教育の一環のはず」などと言われるが、勝負事は勝たなければ意味がない。「勝利以上に求めるものなど何があるんや」と語る高嶋氏の言葉も、指導者として実にシンプルな論理だ。

 裏表がなく嘘をつかない。グラウンドでは常に「一徹」。そんな高嶋氏の人柄と姿勢こそ、甲子園最多勝監督となった最大の要因であるようだ。
(文=小川隆行/フリーライター)

『一徹――智辯和歌山 高嶋仁 甲子園最多勝監督の葛藤と決断』 甲子園通算68勝。誰よりも勝った男が最後まで貫き通したもの。 amazon_associate_logo.jpg

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