「うつ病」や「新型うつ」をはじめ、精神面の不調を抱える人が増え続けているということは、すでにさまざまなメディアで取り上げられています。
2010年に発表された財団法人労務行政研究所の調査結果によると、回答のあった252社のうち、メンタルの不調で1カ月以上休職している従業員がいる企業は63.5%で、05年の調査(50.9%)から大幅に増加しており、メンタルの不調を抱える人とどう向き合っていくかという問題は、企業にとっても他人事ではありません。
では、もし自分の部下や同僚にそのような人がいたら、どのように接するべきなのか。状況や当人の性格もあるので完全な正解はありませんが、精神科医の西多昌規さんは、著書『病んだ部下との付き合い方 精神科医が教える上司の心得』(中央公論新社/刊)で、不調のタイプ別に、対応の方法を教えてくれています。
●従来型うつ病タイプ
古くからの「うつ病」がこのタイプです。性格傾向としては「やさしい・きまじめ・きちょうめん」な人がなりやすく、攻撃性が自分に向かうため、「僕(私)などいないほうがいい」のように、失踪や自殺をほのめかす発言が出た場合、本当に実行に移す危険があるため、周りの人は注意が必要です。
よく知られていますが、このタイプの人に「励まし」や「がんばり」といったプレッシャーを与えるのは控えるべきです。逆に「自分のペースでやればいいぞ」「少しは休んだらどうだ」と、プレッシャーを緩める働きかけをしたほうがいいでしょう。
●新型うつ病タイプ
最近よく話題になる「新型うつ」ですが、これはマスコミによる造語で、精神科医の中でもまだ定
まった呼び名がないようです。
特徴としては「自分をうつ病であると主張する」「他者を非難する傾向が強い」そして「職場など、特定の状況・場面で抑うつ・不安反応がある」など。
このタイプへの対応は精神科医やカウンセラーでも難しいため、職場ではなおさらです。
他罰性が強いため「お前、やる気あるのか!」などと厳しく言ってしまうと、「逆ギレ」される可能性がありますし、休職中に行った旅行の写真をSNSなどにアップされようものなら「なんであいつだけ休んで給料もらってるんだ」と、職場全体から不満が出てくるかもしれません。
ただ、このタイプはルールに対しての理解力は高いことが多いので「無断欠勤がこれだけ続けば退職」など、成長を支援する態度で臨みつつ、就業規則など決められたルールの順守を求めるというのが現実的な対応といえます。
●双極タイプ
好不調の波が度を超して大きく、かつては「躁うつ」と呼ばれていたのがこのタイプです。「躁うつ」という名前だけみると「躁」と「うつ」が半々だと思われがちですが、実際は約7~8割の期間が抑うつ状態だといいます。
「躁」の時のハイテンションの時期にやってしまった失敗があとを引いて、抑うつ状態になることがあるため、職場の対応は「躁」の時こそ注意が必要です。
「その調子でガンガンやってくれ!」などと煽ってしまうと、後で倍返しのようにうつが来ることがあるので、「8割くらいのペースでやってくれれば十分だよ」とブレーキをかけてあげましょう。
今回は、比較的よく知られているタイプについて、その対処法を取り上げましたが、メンタルの不調は実際にはより多様であり、本書ではそのような「あまり知られていないものの、実は深刻なメンタルの不調」についても解説がなされています。
同じ部署にうつで休職している社員がいるのは、もう珍しいことではありません。自分の同僚や部下がメンタルの不調に陥った時、自分に何ができるかを今から考えておくことは、決してむだにはならないはずです。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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