仕事、お金、交友関係、家族関係、人生悩むことは多い。くよくよといつまでも悩むのはいいと言えないが、「悩む」ことは、人間にとって成長につながることでもある。要は、悩み方が大事なのだ。
本書『悩みぬく意味』(諸富祥彦/著、幻冬舎/刊)では、「悩み」を正面から受け、深く「悩みぬく」ことが、「人生においてどのような意味を持つのか」について、『夜と霧』の著書で知られる心理学者のビクトール・エミール・フランクルの思想のもとに考えていく。
さらに、実際にさまざまな悩みに直面した際に、その悩みを「どのように悩んでいけばいいのか」「どのようにして悩みに対処しつつ、そこから人生の大切な気づきや学びを得ていくことができるのか」について、フランクル、カール・ロージャースなどの心理療法家たちの言葉を手掛かりに、濃く深く生きるための正しい悩み方を解説する。
フランクル心理学の独自性は「悩み苦しむことの持つ意味」に焦点を当てた点にある。金銭的な悩みや家族の悩みなど、人生にはさまざまな悩みがつきまとう。こうした問題に対して、多くの心理学では悩みや苦しみを解決し、解除しようというアプローチをとっている。
これに対して、フランクルの心理学は「悩みや苦しみというものが持っている人生における大きな意味」を考える手がかりを与えてくれる。フランクルは『苦悩する人間―苦悩の弁護論の試み―』という本の中で、「人間の人間たるゆえん」は苦悩する存在であることにあると述べている。つまり、「人間は苦悩する存在(ホモ・パティエンス)である」ということなのだ。
さらに、フランクルの「苦悩論」の特徴は、悩み苦しむことを1つの能力であると捉えた点にある。苦悩する能力、悩む力が人間にとっては必要でとても価値あるものだとフランクルは考えたということだ。そもそも「悩む」ということは、さまざまな理由で抱えることになる否定的な感情を自分の内側で内面的に保持するということ。このように「悩む」ことができるのは人間の能力の1つであるということだろう。
ただし、どのように悩むかが重要になってくる。
いつも悩んでばかりいて、暗い顔をしている人が素晴らしいというわけではない。また、本来、悩まなくてもいいことを自意識過剰のようにクヨクヨと悩み続けてもいけない。いかんともし難い悩みに直面したとき、それから逃げず、敢然としてそれを引き受ける。そして、悩みぬく。こうした苦悩の引き受け方こそが重要なのだ。
性格上、ポジティブ・シンキングに賛同できないという人も少なくないだろう。決して悩むことがネガティブな考え方ではないというのが、フランクルの心理学からわかる。悩むべき悩みに対して、本気で悩むこと。それが人間の成長につながっていくということなのだろう。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。