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会社を辞めたくても辞められない…退職妨害、なぜ増加?転職妨害、脅迫行為…防御策とは

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–辞めさせない企業には、中小企業が多いのですか?

溝上 創業者が経営している中小企業に多く見られますが、ワンマン体質の上司がいる大企業も多いですね。部下を潰してのし上がっていく上司などは、部下に辞められると自分の責任になると思っていたり、自分の評価が下がると思っていたりして、必要以上に部下をとどまらせています。

 中小企業にこの問題が多い理由には、経営者の内面に加えて、外形的な要因もあります。学生の大手企業志向を受けて中小企業は慢性的に人手不足なので、熟練社員に辞められると困ることや、社員に辞められるとリーマンショック後に導入された雇用調整助成金を打ち切られることなどが挙げられるでしょう。

–溝上さんは日本社会特有の「甘えの構造」も、この問題の背景にあると指摘されています。

溝上 それは企業一家主義です。仕事と私生活を分離させず、社員は家族であるという考え方です。この考え方のもとでは給料は毎年上がるし、住宅融資や社員旅行などの福利厚生もしっかりしていて社員は手厚く保護されていたので、社員も我慢して働いてきました。

 しかし1990年代に入ると手厚い保護が薄れてきて、一部に忠義心を持って働く社員もいますが、辞める社員が増えてきました。状況が変化したにもかかわらず、経営者の側に社員と“親子の関係”にあるという感覚だけは残っているため「辞めるとは何事か」という感情になってしまうのです。

●退職妨害増加の背景

–ワンマン的発想やパワハラ気質を持つ経営者や上司から、社員はどのようにして身を守ればよいのでしょうか?

溝上 他人から考え方を改めさせられることは、彼らにとって自分の人生を否定されたような気分になってしまうので、非常に嫌がります。社員の立場から防衛策を講じるには、そうした経営者や上司とは付かず離れずの距離感を保っておくことが大切です。親しくなろうと思って近づくと取り込まれて、彼らの手足として使われるようになってしまいます。優秀な部下なら手放せなくなってしまい、辞める意思を告げた時に攻撃されかねません。仮に飲食に誘われても、付き合うのは3回に1回ぐらいにとどめたほうがよいでしょう。

–会社を辞めたくても、妨害行為を受け、苦しむ社員が増えている理由は何でしょうか?

溝上 いまや全労働者のうち労動組合への加入率は17.9%にすぎず、権利を守ってくれる盾が与えられていません。また、学生時代に労働基準法を学ぶ機会がないままに就職するので、経営者はその無知につけ込んできます。退職して一度非正規労働者になったら、ドロップアウトしてしまうという恐れを社員が抱いていることも、経営者に足元を見透かされて理不尽な扱いを強いられる原因になっています。

 一方、社員の親が「石の上にも3年」などと我慢を要求することも、辞めたいのに辞められない社員を増やしている原因の一つでしょう。こうした背景があって、理不尽さを我慢する若者が増えています。

–増加しつつある、社員の退職を妨害する問題に対して、労働基準監督署は十分に対応しているのでしょうか?

溝上 労働基準監督署には、ひとりの監督官が1万社をカバーしている例もあるなど、大幅に人員が不足しています。ブラック企業をきちんと取り締まれる体制が整備されていません。

–問題企業の社名を公表して改善を促すのも、効果的なのではないでしょうか?

溝上 社名の公表は、ひとつの手段かもしれません。さらに、欧州のようにパワハラに関する法的規制を強化することが必要だと思います。スウェーデンでは93年に「職場における迫害に対する措置に関する政令」、イギリスでは97年にハラスメントを違法とする「ハラスメント防止法」、フランスでは職場でのモラル・ハラスメントを禁止する「労使関係現代化法」を施行しています。こうした法的整備を進めることが必要といえます。

–ありがとうございました。
(構成=編集部)

BusinessJournal編集部

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