伊藤 バブル最盛期は大中小を合わせて3000軒くらいで、現在は1500軒くらいではないでしょうか。激減した要因としては、バブル崩壊と08年のリーマンショックが大きかったようです。最近の傾向としては、若い方が銀座にお見えにならなくなり、クラブを利用されるお客様の絶対数は減ったかと思われます。
また、11年の東日本大震災の後に、お店を閉めたオーナーも多いです。つぶれるというよりも、自己資金での穴埋めが嫌になってしまったという人が多かったですね。「自粛」が広がり、震災から約2カ月たった同年5月の連休明けには、ある程度の「自粛」は収まったとものの、結局それが尾を引いてしまい、経営自体が嫌になってしまったママらが結構いらっしゃいました。
–そのようなクラブをめぐる厳しい環境の中、「クラブ由美」のお客様の数も減少傾向なのでしょうか?
伊藤 当店はキャパシティがさほど大きくないので、お客様の数が減ったということは感じたことはなく、お陰様で、クラブに併設されている2つのVIP ROOMをご利用くださる古くからの常連様に支えられております。
–銀座のクラブの数がバブル崩壊後に半減するほど厳しい中、「クラブ由美」が変わらずに生き残っている理由はなんでしょうか?
伊藤 僭越ながら申し上げれば、それは仕事に対する姿勢と、銀座に対する思い入れだと思います。私は一本気ですから、その生き方と心意気を強く支持してくださるお客様に恵まれ、ここまでこられました。基本的に当店のファンの方々のサロンスタイルですので、「お客様であれば誰でもいい」とは思っていないです。なんだか生意気なんですが(笑)。
●出世できない人の共通点
–本書には、「出世する人の共通点」「出世できない人の共通点」が書かれていますが、本書を書かれたきっかけを教えてください。
伊藤 30年以上もクラブのママをしていると、1人の男性の完成形が見られるんです。お客様の中には、若い頃に出会わせていただいて、だんだんと出世されて、「がんばれ、もっと偉くなってください。私もがんばります」というかたちで共に歩んできた方が多いのです。その中でも頂点を極められず、残念に思う方も何人かいらっしゃいました。お客様には、やはりトップを目指していただきたい。そのために「縁の下の力持ちになれたら」「少しご協力できたら」という思い入れもあり、本書を執筆しました。一流企業の中でもスイスイ出世デキる方と不遇な方に分かれるその差を生むのは、「ちょっとした人としての基本」なのだと思い、実存の出世された方々の例を参考に書かせていただきました。
–出世する人は、そのような「ちょっとした人としての基本」を普段から意識して行動しているのでしょうか? それとも自然にそれができているのでしょうか?
伊藤 意識しているというよりも自覚してらっしゃると思います。その自己認識は、良い友人や良き先輩、また親の躾から生ずるものですから、やはり周りの環境というのはすごく大事で、「私は恵まれていない」というのは間違いです。自分の環境は自分自身で築くべきで、「上司や部下に恵まれない」というのは甘い考えです。
–本書の中には、「出世する人」「出世しない人」の共通点が豊富に書かれていますが、一番最初の項目として「臭い人は出世しない」とありますが、どういう意味でしょうか?
伊藤 それは臭いのが悪いのではなく、臭くならないように気遣いできない人はダメだということです。生まれつきの腋臭や多汗症の方は、自分でも自覚しているわけです。それなら、せめてにおわないように気をつけていないと、その人が来たら息を止めたり、席を立ちたくなるじゃないですか。ビジネスパーソンであればなおさら、そのような人は仕事がうまくいくとは思えません。
–人を見て態度を変える人も出世できない、と書かれていますが、自分の出世に有利な人を見抜いてうまく立ち回れる人が出世するのではないかと思うのですが、そうではないということでしょうか?
伊藤 本人はうまく立ち回っていると思っていても、そういう人ははたから見て「調子がいい人だ」と、すぐに見透かされるじゃないですか。上役に媚び諂う人はしょせん、コバンザメにすぎないわけで、逆に、多少不器用でも、自分の信念や姿勢を貫き通している人というのは一目置かれます。