●モチベーションを維持する工夫を
それからもう一つ、筆者があくまで30代後半からのキャリアデザインにこだわる理由があります。筆者は、繁忙やITストレスといった環境面の理由よりも、モチベーションの喪失こそが、メンタルトラブルの大きな理由だと考えています。30代半ばでキャリアに白黒つけたうえで、勝ち上がれなかった社員を飼い殺しにするシステムは、非常に問題があるということです。
例えば、12ラウンド制のボクシングの試合で、4ラウンドが終わった時点で「君の判定負けは確定しているよ。でも、とりあえず最終ラウンドまで戦ってね」と言われたとしたら、その選手はやる気になるでしょうか? 恐らく、一発いいパンチを受けて膝をつけば、もう立ち上がる気力はないでしょう。彼が再び立ち上がれるようにするためには、最終ラウンドが終わるまで勝ち負けのわからない判定システムを導入するしかありません。良い人事制度というのも、必ずそうした流動性を担保するようにできているものです。
本来なら、組織内の処遇をもっと流動化して、序列が固定化することを防ぐ(=各人が一定のモチベーションを維持できるよう制度設計する)工夫が組織の側に必要です。しかし、残念ながらそういう改革は多くの企業では実現していないのが現状で、この点は自分で努力してモチベーションを維持する工夫をするしかありません。
(文=城繁幸/人事コンサルタント)
※本稿は、城繁幸氏のメルマガ「『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」から抜粋・編集したコンテンツです。
【筆者プロフィール】●城 繁幸:人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。
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