今も昔も若い女性は、世の中のトレンド発信を担う層である。どんなジャンルのトレンドにしろ、それがビジネスに結び付けられるのはいわずもがな。つまり10~20代女性のリアルな生態を知ることは、これからの経済の動きを読む上で重要といえるだろう。
本連載では、10~20代のさまざまなバックグラウンドを持つ女性の部屋を訪ね、彼女たちのありのままの姿を浮かび上がらせていきたい。
絶滅危惧種「黒ギャル」のお宅拝見
【お宅訪問の動画はこちら】
本連載第1回目で取り上げるのは、「黒ギャル(=ガングロギャル)」の自宅である。
黒ギャルを見かけなくなって久しい。日焼けサロンなどでこんがりと焼いた肌、付けまつ毛やマスカラを多用して強烈な目力を放ったメイク、金髪や銀髪といったド派手な髪色、目がチカチカするほど原色を取り入れたファッション――。
そんな黒ギャルは、ほんの十数年前には東京・渋谷のセンター街などを中心として、全国各地のいたるところに棲息していたものだが、近年は「絶滅危惧種」と揶揄されてしまうほど減少の一途を辿っている。
今回は現在も現役バリバリで黒ギャルライフを謳歌する、ひとりの女性と接触。交渉の末、彼女の独り暮らしの部屋を取材させてもらう許可を得ることに成功したのだ。
彼女の名前は及川このみさん(通称:このみん)。3月に当サイト記事『話題のガングロカフェに行ってみたら、こんなにスゴかった!ギャルたちがおもてなし!』でも取り上げたことのある「ガングロカフェ」(渋谷区)なる飲食店で、店長を務めているという黒ギャルだ。ガングロカフェとは端的に言うと“メイド喫茶のギャル版”のような飲食店なのだが、詳しくは上記記事を参照してもらいたい。
さて、このみさんが独り暮らしをする部屋があるのは渋谷区。宮城県仙台市が地元だという彼女が選んだのは、最寄り駅から徒歩5分ほどの築約20年のマンションである。渋谷駅からは少々離れたエリアではあるが、ギャルとしてはやはり「渋谷区」在住であることのステータスはいまだに高いことが伺える。
部屋の前に到着した取材班を招き入れてくれた彼女の自室は1K。メインとなる居室は5畳ほどと狭く、バス・トイレは一体型のユニットバスだが、渋谷区の駅から徒歩5分の好立地で家賃が月6万2,000円という金額を考えれば、妥当な物件だろう。
インテリアはカーテンやソファがブラックで、敷布団は紫のヒョウ柄。安定のギャルクオリティーだ。極端に散らかっていたり汚れていたりするわけではないが、30代以上の人にとっては「落ち着かない部屋」という印象かもしれない。そんな部屋をこのみさん自身は「シンプルにまとめた」と豪語するのだから、ジェネレーションギャップを感じずにはいられない。
金銭事情
ここでこのみさんの月収額とその内訳、そしておおまかな支出額の内訳を紹介しておこう。
【月収額 合計・約30万円】
・ガングロカフェ給与 約10万円
・親からの仕送り額 約10万円
・副業(詳細は秘密) 約10万円
【支出額 合計・約30万2,000円】
・家賃 6万2,000円
・食費 約6万円
・水道光熱費 約1万円
・通信費(携帯電話) 約1万円
・被服費 約6万円
・娯楽費 約6万円
・交際費 約4万円
・貯金 0円
収入と支出がほぼ同額。貯金額がゼロなのも納得だ。
「料理が得意」だと言い、実際に撮影時にサバの味噌煮をつくってくれたこのみさんが、食費に6万円もかかっていることが意外に感じた。
「ひとりの時はあんま料理しないんで。お店(ガングロカフェ)のスタッフとか友達とかとご飯行くことが多いから、月に6万円ぐらい使ってると思うよ。とりあえずなんでもいいよって時はファミレスとかで済ますけど、ガッツリ食いたいって時は焼肉行ったりするしね」(このみさん)
意外に大きな被服費と交際費
また、休みの日や仕事終わりに「岩盤浴とかサウナにしょっちゅう行く」とのことで、交際費も4万円という額になるようだ。
余談だが、ギャルの携帯電話費といえば、かつては月2~3万円が当たり前、中には月に5万円以上かかるというツワモノもいたものだが、このみさんは現在1万円とのこと。
「今のiPhoneは長く使ってるんだよね。で、本体のローンが終わってからはケータイ代も安くなった」とのことだが、そもそも今の若い世代は無料で通話やチャットができるLINEをメインで使用しているため、前時代のギャルたちのような莫大な額にはなりにくいのだろう。
最後に触れておきたいのが被服費。いわゆるファッションなどに費やす金額だが、このみさんは「あんまりブランドにこだわりはないけど、気に入ったデザインの服は高かろうが安かろうが即買いする派」らしく、月に6万円もかかっているとのこと。
とはいえ、このみさんが所有するバッグはルイ・ヴィトンやMCMといったブランド物ばかり。
「カレシに買ってもらったりとか、いろいろ」(このみさん)
ちなみに42インチ型テレビも知人からのプレゼントだという。
深くは教えてくれなかったが、男性からの需要という意味での“ギャルブランド”は健在なのだと思い知らされた。
(文・動画製作=昌谷大介/A4studio)