永井に山口、次世代日本人選手を海外に移籍させる“代理人”の存在
(SSコミュニケーションズ)二段目
サッカークラブ経営シミュレーションゲーム 『プロサッカークラブをつくろう!』(セガ)のテレビゲームシリーズは、人気作品の一つだ。クラブオーナーとなり、チーム運営、選手獲得などの人事、施設の整備、さらに選手育成などまで行う。クラブ経営のリアリティーを体験できるゲームである。
しかしながら、実際のクラブ経営はコンピューターと向き合い、数字を弾き出すだけではうまくいかない。
経営とは人と人。
そのつながりで成り立っているものだからだ。
例えば、チーム強化のために必要な移籍において、これは、と思う選手がいたとしても、そこに辿り着くには然るべき人脈がないと成立しない。もしも、その選手が所属するチームの関係者と馬が合わない場合は、コンタクトすらおぼつかないだろう。
実世界のフットボールビジネスでは、人間の信用や情がしつこく絡んでくるために、複雑に入り組んでいる。
そんな“人間的部分”を一足飛びに解決するのが、代理人たちだ。選手の要求を淡々とクラブに伝達し、条件を交渉するのが代理人の仕事。契約に法律的な意味を持たせるなど弁護士的役割もあるが、移籍=流通で儲けるので、選手を商品として扱わざるを得ないこともしばしばある。それだけに、クラブも代理人とは無機的に接する。
ただ、代理人もやはり人である。
凄腕の代理人と組んだクラブは、チームを強くするために不可欠の移籍に関して、ほかを一歩リードできるだろう。この人脈を、なんとしてもつかまないといけない。
そんな代理人の世界的ボスが、ポルトガル人のジョルジェ・メンデスである。
メンデスは、FCポルト、チェルシー、インテル、レアル・マドリーと欧州4カ国でいずれも頂点に立った世界最高の指導者、ジョゼ・モウリーニョの“影の参謀”とも言われる。モウリーニョの代理人も務めるメンデスは、チーム強化のための人材を供給してきた。現在マドリーでメンデスと契約している選手は、クリスチアーノ・ロナウドを筆頭に、ペペ、ディ・マリア、コエントラン、リカルド・カルバリョなど枚挙にいとまがない。
ただ、代理人は複数のクラブ、複数の選手と関わっているわけで、クラブの経営者は、その都度、適正な判断を下さなければならない。狡猾な代理人は、自分がパス(所有権)を持っている選手を“バーター”で強引に売り込んでくることもある。
ギャンブル的な読みと果断さ。
そのふたつを問われるのが、フットボールクラブ経営だろう。なぜならバーターでやってきた選手が意外に活躍することもあるから、正解は予想がつかない。
こうした代理人との付き合いを一つ取ってみても、成功と失敗が大きく分かれることが分かる。