ついて聞いてみた』(講談社)
10月9日、日経平均株価は中国との取引が大きい自動車、エレクトロニクス、建設機械など主要企業の業先悪化の懸念から90円以上も下げたが、山中教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)に絡む銘柄は、軒並み急騰した。ノーベル賞受賞というドリーム(夢)を手掛かりに買いが入ったわけだ。
酒好きの人が、何か口実を設けて酒を飲むようなものだ。投資家はiPS細胞のノーベル賞で再生医療が普及するという大材料に買い注文を出した。
お祭りがあったら、真っ先に駆けつけ、まず踊らなければ儲からないのが兜町である。
今回、個人投資家(いや投機家か)は、こぞってバイオ祭に参加して踊った。iPS細胞・再生医療関連と囃したてたのは、新興市場の銘柄が多かった。
東証マザーズでは、がん免疫細胞療法の「メディネット」、遺伝子受託解析の「DNAチップ研究所」、創薬ベンチャーの「そーせいグループ」、同じく創薬ベンチャーの「カイオム・バイオサイエンス」、ナノキャリア・バイオベンチャーの「スリー・ディー・マトリックス」、遺伝子研究用試薬の「タカラバイオ」など。
ジャスダックでは、がん免疫医療法の「テラ」、免疫血清学的検査用試薬の「カイノス」、臨床検査薬の「医学生物学研究所」、研究用試薬の「免疫生物研究所」、DNA自動抽出装置の「プレシジョン・システム・サイエンス」、細胞シート再生医療の「セルシード」、「ジャパン・ディッシュ・エンジニアリング」などだ。
その中で本命と目されているのは、タカラバイオ(滋賀県大津市、仲尾功一社長)。iPS細胞の作製に使う遺伝子や試薬の販売、iPS細胞の作製受託サービスを手掛ける。京都大学iPS細胞研究所にiPS作製に必要なDNA(デオキシリボ核酸)を提供し、共同研究をしているのも同社だ。胚(はい)性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞など、さまざまな細胞に分化する能力を持つ幹細胞の動きを、簡単に調べられる試薬を10月1日から発売した。
タカラバイオは遺伝子研究用試薬が収益源で、13年3月期の連結売上高は前期比7.7%増の211億円。本業のもうけを示す営業利益は横這いの16億円を見込んでいる。親会社は宝ホールディングス。焼酎とみりんの最大手で缶チューハイでも知られる会社だ。