10月9日、山中教授のノーベル賞受賞が決まったことでタカラバイオは取引直後から買い注文が殺到し、株価は制限幅の上限に達するストップ高(80円高)の497円に。これ以降、株価は連騰を続け、17日には、1010円の年初来高値をつけた。
ノーベル賞発表直前の10月5日、同社株価の終値は417円。そして10月9日から17日の7営業日で、株価は2.4倍に跳ね上がった。417円で10000株を買い、1010円で売れば、593万円と600万円近くもうかったことになる(※手数料や株取引にかかる税金などは除いて計算)。10月16日には一時、サイバーエージェントを抜き、東証マザーズで時価総額で首位に立った。株価上昇に伴い取引が急増、売買代金も膨らんだ。
●先物買いで乱高下。祭り状態の市場
株価が急騰した後、利益を確定させるため売りが出て、株価が乱高下するバイオ銘柄が相次いだ。買われたのは業績が好転したからではなく、いずれも市場の思惑だったからだ。
山中教授がiPS細胞と命名するにあたり、「I」を小文字の「i」にしたのは、米アップルのiPodにあやかってのことだという。iPS細胞はiPodのように、一気に国際的ブランドになった。
中長期のスパンで“山中関連銘柄”を買いたいという向きは、03年から文部科学省が実施している「再生医療の実現化プロジェクト」に研究員を送り込んでいる「武田薬品工業」「アステラス製薬」「島津製作所」あたりを狙ってはどうか。島津製作所はiPS細胞から作った治療用細胞を培養する装置の実用化のメドをつけている。「エーザイ」は慶応大学と共同で105歳以上、健康で長生きした人の細胞からiPS細胞を作り神経細胞に育てることに成功した。パーキンソン病などの治療法が確立できるかもしれない。ジャスダックに上場しているジャパン・ディッシュ・エンジニアリングには富士フイルムが41.2%出資している。
10月16日には、あまり名前は知られていないが、東証一部上場の「新日本科学」といった、一見、iPS細胞とは関係ない銘柄まで買われた。新日本科学は、前臨床試験受託の大手。わかりやすくいえば動物実験をする会社だ。「協和発酵キリン」や抗ガン剤メーカーとして昔から有名な「日本化薬」といった大型株まで値を上げた。
バイオの専門商社「コスモ・バイオ」の株価が2.3倍になったのは、非上場でiPS細胞ベンチャーの星といわれ高い評価を得ている「リプロセル」(横浜市)に出資しているからだ。リプロセルに出資している企業は「伊藤忠商事」「ニプロ」「メディネット」などだ。