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吉田潮「だからテレビはやめられない」(11月21日)

話題(?)の『夫のカノジョ』、なぜ低視聴率?欲求不満とがっかり感を抱かせるワケ

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『夫のカノジョ』公式サイト(TBS HPより)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。


「不倫叩き」が流行している。赤の他人の惚れた・腫れたの恋愛ごとなんか正直どうでもいいし、わくわくするようなネタを提供してくれてありがとう、って感じなのに。以前にも増して、世の中は不倫や浮気を徹底的にぶちのめす傾向がある。そんな風潮が超低視聴率の根源にあるんじゃないかと思うのが、今クール(10〜12月期)の連続テレビドラマ『夫のカノジョ』(TBS系)である。

 誤解のないよう説明しておくと、このドラマはけっして不倫ネタではない。妻が夫の不倫を疑うところから物語は始まるが、不倫ドロドロ略奪愛の芳ばしい物語ではない。ほんわかファミリー系で、きわどさも鋭さも後ろめたさも一切ナシ。ところが、タイトルは『夫のカノジョ』。アンチ不倫派は「さあ、叩こう!」と息巻いて、手ぐすね引いて待っていたのに、拍子抜けするほど中途半端な内容。「ちっ」と舌打ちして、視聴しなくなったのではないか。逆に、不倫好きも同様。

 つまり、両方ともが欲求不満なのである。枠内におさめられた予定調和のほんわかファンタジーなんて、毒にまみれた世間からすれば心ときめくはずもない。不倫好きでもアンチ不倫派でも、ユーモアを理解するリテラシーがある人は、昼ドラ『天国の恋』(東海テレビ)に流れちゃったんだろうな。なんつったって、石田純一と毬谷友子の濃厚熟年の不倫大爆笑コメディが楽しめるから。

 と考えると、確かに主演陣もやや印象が弱い。個人的には川口春奈をカワイイと思うし、芝居がそんなに下手だとは思わない。ただ、すでに「パッとしないグループ」にエントリー済み感はある。「パッとしないグループ」の代表格は黒谷友香だが、川口も心なしか顔が似ている。美人顔なのにニーズがない、性格がよくても脚光を浴びない、主演をしてもけっして話題にならず。最終的には健康食品のイメージキャラに落ち着きがちな、そんなグループ。『天魔さんがゆく』(TBS系)で好演していたときの輝きはどこへ行ってしまったのかと思うくらい、パッとしない役柄だ。もちろん、ホクトのCMで新境地を開拓した鈴木砂羽も、ハンサムバカのキャプテン・田辺誠一もしかり。なんか地味、なのである。

 ただし、最大の弱点は、設定そのものだと思う。20歳OLの川口春奈と39歳専業主婦の鈴木砂羽が入れ替わってしまうというのは、陳腐な手ではあるが、まだよしとしよう。そもそものキャラクター設定に、腑に落ちない部分が多すぎるのである。

 20歳の川口は本音でズケズケとモノを言う役柄で、39歳の鈴木は心配性で長いものには巻かれる滅私タイプ。ところが、いまどきの20歳の子はそもそもこんなに元気で、自分が正しいと思うことをそのまま口にできるほど強くない。常に空気を読むこと、人の顔色をうかがうことを心がける謙虚な世代ではないだろうか。逆に、39歳はそこそこのアイデンティティを確立していて、夫と家族のためだけに尽力するなんて自殺行為だとわかっている世代だ。長いものに巻かれつつも、その一方で自分探しにも余念のない世代のはず。

 つまり、キャラ設定がまったく逆なのである。そこからしてリアリティに欠けるし、渡辺えりがハロウィン崩れの魔女の扮装でしょっぱなに出てきちゃったもんだから、みんなが大きなため息をつくのも仕方ない。初回からがっかりさせられたもの。

 主演陣がどうこう、というよりは、設定の甘さと煮え切らない主題の置き方が悲劇の始まりだと思う。まったく、昨今のTBSのファンタジー好きには困ったもんだよな。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。