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エビ、価格高騰の衝撃〜混乱の外食・小売り業界、アジア需要急増に商機見いだす商社

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「Thinkstock」より
 今年はエビが話題をさらった年だった。

 ホテルやレストラン、有名百貨店がメニューの虚偽表示をしていたことが次々と明らかになったが、圧倒的に多かったのがエビ。バナメイを芝エビ、ブラックタイガーをクルマエビと表示していたというものだ。

 エビをめぐる騒動は、お正月のおせち料理に使う伊勢エビにも及んできた。東京・築地市場での取引価格は騒動が起きる前に比べて3割程度上昇し、11月上旬に1キロ8000~8500円になった。これまでロブスターを伊勢エビと称して使っていた業者が慌てて本物の調達に動いたため、卸売価格が高騰したとみられている。また、伊勢エビの本場、三重県の卸売業者は「正月のおせち分の本物の伊勢エビを確保しようと、有名百貨店が買い占めている。1キロ1万円台は時間の問題だ」と証言していたが、12月初旬に1万1000円前後にはね上がった。その背景には、大手百貨店やそれらにおせちを納入しているような有名店が、損を覚悟で伊勢エビの数量確保に動かざるを得なくなっているという事情もある。

 食材の偽装表示で一躍脚光を浴びたのがバナメイ。日本の食卓に上る大半のエビは、芝エビと似たサイズのバナメイとブラックタイガーだ。芝エビという名称は元来、東京・芝浦で取れていたことに由来し、懐石料理やかき揚げ、エビ団子などに使われる。
芝エビは天然物なので供給が安定せず、資源も減少している。九州産などが生を中心に少量流通しているだけだ。芝エビが出回らなくなったため、代わって養殖のバナメイが登場してきた。

 一方、輸入エビはかつてはブラックタイガーが多かったが、ここ10年ほどで中南米原産のバナメイが主流になった。効率良く養殖できるバナメイが輸入エビの主力となり、高級食材だったエビの価格が下がる傾向になった。サイズや産地、グレードによって価格はまちまちだが、バナメイは芝エビの半値といわれており、中心サイズは13グラム。バナメイを芝エビと表示していたケースが多かったのは、バナメイが安く手に入るからだ。

 ところが今秋、バナメイの卸売価格が1.8キロ当たり2300~2400円と、前年の同じ時期(1100~1200円)の2倍にはね上がった。いまでは芝エビとの価格差がほとんどなくなった。このあおりでブラックタイガーの値段も上がり、インド産が前年の2倍、インドネシア産も1.8倍になった。ちなみに国産で養殖のクルマエビは同5000円と、一気に値が上がる。

●対応迫られる外食

 外食各社はエビの仕入れ価格の高騰に悲鳴を上げ、輸入エビを使ったメニューを相次ぎ縮小した。外食大手、ロイヤルホールディングス傘下の天丼チェーン「てんや」は、10月からエビの天ぷらが2本が入った「上天丼」「海老天そば」などのメニューを休止した。同社はベトナム産のエビを使用してきた。

 回転すし大手、あきんどスシローも、えびチーズ、えびバジル、えびの天ぷら盛り合わせなど、エビを使った5つのメニューを中止した。他のチェーン店でもエビを使ったメニューをやめたり、エビの量を減らした新しいメニューに切り替える動きが広がっている。

 こうした外食各社の相次ぐエビ使用メニュー休止の原因は、エビ生産大国のタイ、インドネシア、ベトナム、中国などの養殖場で早期死亡症候群(EMS)と呼ばれる病害が広がり、生産量が大きく落ち込んだためだ。世界最大の輸出国であるタイの養殖場では、バナメイが大打撃を受けた。年間50万トンを輸出していたが、今年は20~25万トンに激減する見通しだという。上半期(4~9月)、タイから日本への輸入は半減した。バナメイが激減したことによって、ブラックタイガーなどのエビに需要が集まり、価格が高騰した。東京築地市場には外食店や小売店から産地証明書が欲しいという要望が寄せられている。そして多くの料理店が慌ててメニューを書き換えたりと、波紋は広がる一方である。