●大手商社はエビ養殖に進出
輸入エビの高騰は、中国などアジア各国の消費拡大が原因の1つになっている。エビチリやエビ塩そばなど、中華料理にはエビがつきものだ。中国では、この10年間にエビの需要は2.2倍に増えた。
だが、天候不順に見舞われた中国では、今年の生産量は例年の3割減。春節(旧正月)需要を見込んで、世界各地で買い付けたことから、世界的な需要逼迫を招いたのである。中国などアジアにおける需要拡大で、エビの価格は上昇基調にある。
これをビジネスチャンスと捉え、養殖事業に踏み込んだのが、大手商社だ。
双日は昨年、エビの養殖・加工事業を始めた。インドネシアでエビや魚の養殖・加工を手掛けるサビンド社と合弁会社を設立し、現地に養殖池や冷凍加工工場を整備。日本のエビの輸入量の4割前後を占めるブラックタイガーを養殖し、日本や中国に輸出する。エビの年間取扱量を現在の1万5000トンから、数年以内に2万トンに引き上げる。設備増強の総事業費は8億円。
三菱商事は昨年、タイの水産加工大手、タイ・ユニオン・フローズン・プロダクツと合弁でエビの養殖事業に乗り出した。三菱商事が49%出資する合弁会社がタイ沿岸の複数の養殖場を買収して、新規に事業を立ち上げる。18年度で年産1万トン規模の取り扱いを目指す。総投資額は30億円。
天然エビの漁獲量は頭打ちで、伸び続けている需要は養殖に頼らざるを得ない状態にもかかわらず、今年は養殖の生産量が激減した。そのため世界中でエビの争奪戦が激化し、価格は暴騰した。エビの病害は簡単に解決されないため、エビの価格は高止まりするとの見通しが強まっている。
日本人にとって身近な食材であるエビが、なかなか手に入らない“高級食材”となりかねない事態を避けるためにも、こうした大手商社のような民間レベルの動きが広がることを期待したい。
(文=編集部)