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明るさ戻る鉄鋼業界、今年本格回復なるか?好調・新日鐵住金、生産効率化と海外攻勢加速

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新日鐵住金本社が入居する
丸の内パークビルディング
(「Wikipedia」より)
 新日本製鐵と住友金属工業が合併した新日鐵住金が誕生して、昨年10月で1年が経過した。

 年間粗鋼生産量は4790万トン。ルクセンブルクに本社を置くアルセロール・ミタルの9360万トンに次いで世界第2位だ。合併に伴う生産の効率化やコスト削減に取り組み、株式の時価総額はこの1年でほぼ倍増し3兆1000億円となり、鉄鋼業界で世界トップに立った新日鐵住金は、今後海外市場への攻勢を強める。

 まず、ミタルと共同で独鉄鋼大手、ティッセン・クルップから米国南部アラバマ州の自動車鋼板工場を買収することで合意。買収額は15億5000万ドル(約1550億円)となる見込みで、新日鐵住金とミタルが折半出資し、今年中頃までに買収を完了させるが、実はこのアラバマの工場は大赤字だ。ティッセンは世界有数の鉄鉱石産出国であるブラジルの製鉄所で半製品をつくり、自動車向けなど高級な鋼板の需要が多い米国で最終製品に加工するためにこの工場をつくった。ブラジルと米国での設備投資額は1兆円近くに上った。

 ところが08年のリーマンショックをきっかけに、米国など先進国の鉄鋼需要は激減。その一方、中国で新規高炉が次々と稼動を始めたため、需給バランスが一気に崩れた。アラバマ工場が稼動した10年以降の3年間で、ブラジルの製鉄所を合わせたティッセンの米州事業は1兆円以上の巨額損失を計上。ティッセンは12年秋から工場売却を検討していた。

 新日鐵住金の樋口眞哉副社長は記者会見で、工場買収の理由について、「(北米に進出している日本の自動車メーカーなど)われわれにはカスタマーベース(顧客層)がきちっとある」と説明した。さらに、「当社とアルセロール・ミタルが運営するほうが工場の価値を高められる」「米工場は短期間で黒字にすることが可能。買収金額は割安」と自信を見せた。

 新日鐵とミタルは米中西部のインディアナ州で自動車用鋼板工場を2社、20年以上前から合弁で展開しており、トヨタ自動車や本田技研工業(ホンダ)といった日系自動車メーカーを大口顧客として抱えている。アラバマ工場で製造する鋼板についても、すでに販売先のメドがついており、ティッセンのように需要先探しに苦労することはないという。

 米国における自動車販売台数の回復という追い風を受けて、新日鐵は海外へ打って出た。

●明るさ戻る鉄鋼業界

 鉄鋼業界に明るさが戻ってきた。新日鐵住金社長で日本鉄鋼連盟の友野宏会長は13年11月26日の定例会見で、13年の粗鋼生産量について「1億1100万トンが視野に入っている」と述べ、生産が着実に回復しているとの見方をあらためて示した。暦年ベースで粗鋼生産量が1億1000万トンを超えれば、08年以来、実に5年ぶりとなる。併せて13年度(13年4月~14年3月)についても同1億1000万トンを超えるとした。年度ベースでの1億1000万トン超えは10年度以来3年ぶり。ちなみに12年度の粗鋼生産量は1億730万トンだった。

 粗鋼生産量が持ち直した原因の第1は、円安の進行だ。最大顧客である自動車メーカーの業績が急回復し、自動車向けが堅調に推移した。

 鉄鋼を取り巻く経済環境が大きく改善された結果、新日鐵住金の13年4~9月期の業績も上向いた。旧新日本製鐵との比較で売上高は前年同期比39.4%増の2兆6745億円となり、営業損益と最終損益はともに旧新日鐵時代の赤字から黒字に転換。営業損益は1392億円の黒字(旧新日鐵の前年同期は26億円の赤字)、最終損益は1155億円の黒字(同1766億円の赤字)となった。

 13年上半期の鋼板価格交渉で、2年ぶりに値上げが実現。鋼材価格は12年下期に比べて1トン当たり7000円アップし、業績のV字回復に貢献した。