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“投資会社”ソフトバンク、なぜ負債膨張でも株価好調?携帯世界2位へ加速するアクセル

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ソフトバンク本社機能が所在する
東京汐留ビルディング
「Wikipedia」より/Itoshin87)
 11月18日、ソフトバンク前取締役、福岡ソフトバンクホークス前代表取締役社長兼オーナー代行を務めた故・笠井和彦氏の「お別れ会」がホテルニューオータニ東京で催された。その会でソフトバンク社長の孫正義氏は弔辞を読み、一時、同社の上場廃止を考えていたことを明らかにした。

「2008年秋のリーマン・ショックが収まってきたころ。株価の大きな変動を受けて孫社長は笠井氏に「アナリストやジャーナリストへの説明が面倒。いっそ個人で会社を背負おうかと思う」と相談。これに笠井氏は「夢をちっちゃくしていいんですか」と強く反対した。孫社長は、『あの時止めてくれなかったら、その後のスプリント買収も無理だっただろう』と、絞り出すような声で感謝を述べた」(11月19日付朝日新聞より)

 笠井氏は表にはあまり出なかったが、孫氏の軍師だった。富士銀行(現みずほ銀行)副頭取、安田信託銀行(現みずほ信託銀行)会長を務めた笠井氏は2000年、孫氏から三顧の礼をもってソフトバンクに迎えられた。そして、ボーダフォン日本法人(現・ソフトバンクモバイル)やスプリント・ネクステルの買収などソフトバンクが大勝負を決断する際には必ず、銀行時代に為替ディーリング部隊を率い「為替の神様」といわれた笠井氏が為替や金利の見通しについて指南していた。

 孫氏が上場廃止を考えたのは、08年9月に米投資銀行リーマン・ブラザーズが倒産した、いわゆるリーマン・ショックの直後である。同年8月半ばまで2000円台で推移していたソフトバンクの株価は、10月28日には636円に大暴落した。あらゆる銀行で融資先への姿勢が厳しくなるとの見方が強まり、借入金の多い会社に危険信号が灯った。その代表格がボーダフォンの買収で有利子負債が2兆4949億円(08年9月末)に膨れ上がったソフトバンクだった。当時、孫氏は「まるで経営が破綻するかのような勘違いを(金融市場は)している」と語り、風聞を意に介さないそぶりを見せていたが、実際は笠井氏に相談するほど追い詰められていたのだ。

●再び膨れる有利子負債

 そして今、スプリントの買収により、ソフトバンクの有利子負債は再び膨れ上がっている。

 ソフトバンクの13年上期(4~9月期)の連結決算(国際会計基準)によると、スプリント買収日(13年7月10日)の有利子負債は2兆7582億円だったが、9月時点では8兆8401億円の3.2倍にまで増えている。スプリントがソフトバンクにとっていかに大きな買い物だったのかがうかがえる。

 ソフトバンクはM&A(合併・買収)攻勢で13年度中間期決算の売上高、営業利益、純利益がいずれもNTTドコモやKDDI(au)を上回り、国内大手携帯電話会社3社の中で1位となった。売上高は2兆5986億円(前年同期比72.7%増)、営業利益は7150億円(同66.6%増)、純利益は3949億円(同84.1%増)。売り上げには買収したスプリントの分が上乗せられた。同社の営業損益は赤字だが、ゲーム会社のガンホー・オンライン・エンターテイメントやPHS(簡易型携帯電話)事業を手掛けるウィルコムを子会社化にしたため、その利益が加わった。一連のM&A効果で14年3月期は売上高が6兆円以上、営業利益は1兆円以上になると予想している。

 ソフトバンクはボーダフォンを買収した時と同様に、スプリント買収では自社の体力をはるかに上回る投資に踏み切った。有利子負債は大きく膨れたが、今回は株価の暴落は起きなかった。リーマン・ショックで金融市場が収縮していた時とは一変し、現在はアベノミクスを追い風にして株式市場が活況に沸いているという環境の違いが大きかったとみられる。

●“投資会社”ソフトバンク、市場は高評価

 実際にソフトバンクの株価は絶好調だ。昨年11月25日の東京株式市場では、同社の時価総額(終値)は10兆円を上回った。三菱UFJフィナンシャル・グループに約1兆円の差を付け、トヨタ自動車(約22兆円)に次ぎ第2位となった。12月11日には、06年1月の株式分割後としては初の9000円台に乗せ、終値は前日比160円(2%)高の9060円。売買代金は東証1部で首位の1827億円。東証1部全体の売買代金の1割近くを占める大商いとなり、さらに12月19日には9100円の高値をつけた。