株価上昇のきっかけは、約37%を出資する中国の電子商取引(EC)最大手、アリババ集団の企業価値についてRBCキャピタル・マーケッツが1500億ドル(約15兆円)と試算したことだ。この情報が伝わりソフトバンクの株価が急騰した。
外資系証券会社のアナリストは「海外では、ソフトバンクは投資会社としての評価が高まっている」と語るが、同社の13年度中間期決算における負債・資本合計は15兆6045億円と、事業会社としては大きな額だが、投資会社として見れば驚くような金額ではない。ソニー株式の買い占めを進め、エンタテインメント事業の分離を求めている米投資ファンド、サード・ポイントがソフトバンク株式を約10億ドル(約1000億円)分取得したのは、ハイリターンが期待できると踏んだからだ。
投資会社は次々と新しい投資先を開拓しなければならないが、ソフトバンクも昨年10月15日、フィンランドのオンラインゲーム会社、スーパーセルを1500億円で買収。その4日後には、米携帯端末卸大手、プライトスターを1230億円で買収した。立て続けのM&Aが投資会社としての評価をますます高め、株価が上昇した。
M&Aの次の標的は米国4位の携帯電話事業会社、TモバイルUS。ソフトバンクが子会社にした同3位のスプリントを通じ、今春にもTモバイルUS株式の大半を取得する。昨年12月13日付ウォール・ストリートジャーナル電子版によると買収額は2兆6000億円になる見込みだというが、これが実現すればソフトバンク・グループの携帯電話事業の年間売上高は7兆円に達し、中国移動(チャイナ・モバイル)に次ぐ世界第2位に浮上する。
最先端のモバイルネットサービスが生まれ、今も成長を続ける米国市場でソフトバンクは足場を固める。スプリントとTモバイルUSを合わせて早期に1億人の契約を達成し、米ベライゾン・ワイヤレスなど米国2強に対抗できる事業規模にする。
ソフトバンクは今年も、とどまることを知らずにアクセルを踏み続ける。
(文=編集部)