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万引き、困難さ増す店側の対応と経済的喪失~防犯強化・訴訟回避・顧客満足をどう両立?

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法務省「2013年版 犯罪白書」-「窃盗 認知件数の推移(手口別)」より
 昨年は、アルバイト社員等による「SNSへの写真投稿による炎上騒動」や、有名ホテルや大手百貨店による「食品偽装問題」が話題になりました。飲食店や小売店においては、世間のコンプライアンス意識向上に伴い、店員に対し「善悪の判断」を積極的に促す雰囲気ができつつあるように感じます。

万引き窃盗)の対応と新たな課題

 最近、多くの小売業における重要な経営課題の一つとなっているのが「万引き(窃盗)」対策ですが、加害者も被害者もこれまでの慣習での対応が通用しなくなるのではないかと考えられます。

 まず、ここでは「万引き」を「万引き(窃盗)」という書き方にしていますが、これは「万引き」が軽犯罪等ではなく、刑法235条の「窃盗罪」であり、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっていることを明確にするためのものです。

 さて、テレビ番組などで万引きGメンが万引き(窃盗)犯を店から出たところで捕まえて事務所に連れていって詰問し、自白と共に盗品を机に出すシーンを目にすることがありますが、もし事務所への同行を拒否した場合やカバンを開くことを拒否した場合には、強制的に事務所に連れていくなどの行為そのものが、刑法220条の「逮捕・監禁罪」に問われることもありますので、万引き(窃盗)犯への対応についてはより注意が必要となります。

 加えて、万引き(窃盗)は、加害者も被害者も同じ生活圏内に住んでいることが多く、穏便に解決を図りたいと考える事業主の指示の下、「店頭にパトカーを止めるようなことはしたくない」とか「あのお店はお客さんを万引き犯だと思って接客しているとは思われたくない」等の考えから、現場社員が難しい判断を迫られることもありますので、ここで万引き(窃盗)の被害と対策について整理しておきたいと思います。

 ポイントは、(1)従業員の安全管理、(2)小売店が訴えられないためのプロセス、(3)顧客満足向上です。

●万引き(窃盗)件数の推移

 さて、昨年12月にニュース等でも取り上げられた警察庁発表「刑法犯認知件数(2013年1月~11月、暫定値)」を見ますと、刑法犯全体は減少しているものの、万引き(窃盗)は約1割を占め高止まりしています。この発表の中では、万引き犯の少年や成人の摘発が減少し、高齢者の検挙数が上昇していることが示されています。

 1件1件は少額であることの多い万引き(窃盗)ですが、経済的にはどのような影響があるのでしょうか。

●小売業の万引き被害を金額から考える

 万引き(窃盗)による日本国内の小売業における被害総額は年間4,500億円以上と試算されており、これは1日で約12億円、営業時間が12時間と仮定すると全国で1時間当たり1億円の売り上げが消滅している計算になります(参照:『グローバル・リテイル・セフト・バロメーター2011』<チェックポイントシステム ジャパン>)。

 この金額に対して、小売業の売上高対人件費比率を15%、従業員の平均年収を300万円と概算した場合、年間で「2万2,575人」分の雇用が喪失していることになります。

 さらに広げて、総務省統計局の「第63回 日本統計年鑑 平成26年」では、小売業の従事者数は757万9,000人(全就業者数6,319万人の12%)と記載されていますので0.3%相当となります。文部科学省の「文部科学統計要覧」では、大学生数が287万人ですので、一学年を4分の1の72万人と仮定すると、一学年の約3%に相当する働く機会が万引き(窃盗)によって失われていると考えることもできます。