ちなみに証拠とするためには、(1)本人性が確認できる映像であること、(2)万引き(窃盗)の行為が鮮明に映っていること、(3)万引き(窃盗)を行うところから会計をせずに店外へ出るところまでの映像が捉えられていること、が必要です。これらの1つでも欠ける場合には、監視カメラに万引き(窃盗)の瞬間が映っていても、万引き(窃盗)犯を現行犯逮捕以外で逮捕することは困難になるようです。
●高齢者の万引きにいかに対応するか
先の警察庁の発表では、高齢者による万引き(窃盗)の場合、独居率が36.7%と孤独を感じやすく、「生きがいがない」といった経済的な理由以外の動機、さらには認知症等の影響もあることが指摘されていました。これらから考えられるのは、万引き(窃盗)の「常習化」(中には、犯行そのものを覚えていないとか、支払いを忘れるといったものも含めて)の可能性と、高齢化社会が拡大することによる万引き(窃盗)とされてしまう事案は増加するのではないかと思います。
●従業員でどこまで対応できるのか
多くの小売店では、最小限の店舗スタッフでシフトを管理し、さらに接客サービスという最重要の役目を担っています。そのような状況ですべての来客に注意を払うことや、ましてや万引き(窃盗)の瞬間に立ち会うということはとても困難なことです。
また、万引き(窃盗)の中でも「換金目的」の場合は、店舗スタッフの少なさを逆手に取り、窃盗グループとして来店し、数名が店員を引きつけてから他の人物が金品を持ち出すケースもあり、限られた店舗スタッフだけで対応するにも限界があります。
テレビ番組などで特集される万引きGメンの活躍は単独犯であることが多く、警察庁の統計上も単独犯行が多いとされていますが、検挙されていないケースもあるでしょうから、テレビで観るようなケースばかりではなく、店舗スタッフの皆さんはもっとシビアな場面に遭遇していることが想像できます。
●監視カメラの導入と不正行為情報の共有
日常生活でコンビニエンスストア等に行くと、複数台の監視カメラを目にすることがあります。店内を監視しているものと、レジだけを撮影しているものがあります。多くの小売店舗が監視カメラを設置しているわけですが、犯行に気付いた後に映像を確認することはあっても、古い順に映像データが廃棄されているのが現状です。
最近では、ドラッグストアチェーンのケースのように過去に万引き(窃盗)を行ったことのある来店客について、監視カメラから割り出した顔画像を店舗間ネットワークで共有し、来店時に店舗スタッフ間で注意を促すような取組みも行われています。しかし、来客を万引き(窃盗)犯であると想定して接客をするわけにもいきませんので、すべての来店客の動向を人間の目で追い続けることはほぼ不可能と考えられます。
●来客管理のための認証システム
監視カメラでは店内映像を録画するだけですが、顧客情報管理という観点から、映像に映る「顔」を認識して、映像と来店客データを照合する取り組みもあります。
入国審査等では少し前から活用されていましたが、現在では来客のデータ管理を目的として、監視カメラとは別に顔認証システムを導入しているところもあります。有名なものとしては、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」では、年間パスと連動した入場者情報管理に活用されています。同時に、これまでICカードや指紋認証等が使われてきた企業における入退室管理においても、複数のメーカーから顔認証システムが提供されています。(参照:「顔認証とタブレット端末を活用した施設の入退管理システムを発売」<http://jpn.nec.com/press/201310/20131001_01.html>)
同様の目的で、お薦めの飲料を紹介する自動販売機や、マンションのオートロックに対応させたもの、常連客管理を目的として導入している遊興・サービス業なども増えてきています。