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製パン業界2位「Pasco」、利益が減っても“国産小麦パン”にこだわる理由

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※画像:『ゆめのちから――食の未来を変えるパン』著:盛田 淳夫/ダイヤモンド社

 少子高齢化や政府の過剰債務など、大小さまざまな課題を抱える日本ですが、「食料自給率」も間違いなくその一つ。食糧を海外からの輸入に頼らざるを得ない今の状況が、将来的に大きなリスクになりうることは、以前から指摘されています。

 この問題に、自社の取り組みを通じて立ち向かおうとしている企業があるのをご存じでしょうか。日本国内の製パン業で第2位のシェアを誇る「敷島製パン株式会社」です。「敷島製パン」に聞き覚えがなくても、同社のブランド名である「Pasco」のパンをスーパーやコンビニで見たことがある人は多いはず。

 食料自給率の問題でいえば、パンの原材料である「小麦」も例外ではありません。敷島製パンは、この小麦を海外からの輸入に頼るのではなく、多くの小麦農家や研究機関と協力し、国産小麦を栽培、その小麦を使ったパンを販売することで、食料自給率の低下に歯止めをかけようとしているのです。

 しかし、小麦を国内で生産することも、国産小麦を使ったパンを作ることも、私たちが考えるほど簡単ではありません。うどんなど麺類の原料になる「中力小麦」はまだしも、パンの原料となる「強力小麦」は日本の気候では安定した収穫量を保つことが難しいのです。そのうえ、値段は外国産の2~3倍。敷島製パンがこの取り組みを始めた当時、小麦の品質も主な輸入元である北米産のものに劣るものが多かったようです。

 『ゆめのちから――食の未来を変えるパン』(ダイヤモンド社/刊)は、同社が国産小麦「ゆめちから」を開発するまでの道のりを描いたドキュメント。困難を乗り越えて、目的を実現させてしまう熱意と行動力は、ビジネスパーソンなら胸が熱くなるはずです。

■すべてはここから始まった。「ゆめちから」の前身「北海261号」との出会い


 「ゆめちから」の元になった小麦は「北海261号」という品種でした。パン向きの「超強力小麦」というのがこの品種に注目した理由でしたが、「北海261号」で作ったパンの食感は、弾力が強すぎ、ベーグルのような仕上がりになってしまいます。また、外国産小麦で作ったパンと従来の国産小麦で作ったパンを比較すると、国産小麦でつくったパンはボソボソ、もそもそした食感になってしまい、改良剤を入れる必要があったといいます。

 しかし、敷島製パンは、この課題を「小麦粉のブレンド」によって解決しようとしました。

 小麦は季節や温度によって吸水率が変わりますし、収穫した畑によって成分も変わってきますから、そのたびに調整を加えないと、一定の品質のパンを作り続けることができません。そのため、5%単位で配合率を変えたり、ブレンドする小麦を変えるなど、気の遠くなるような試行錯誤の末に、改良剤に頼らず小麦だけの力でおいしく焼きあがるパンを作りあげていったといいます。

 さらに、収穫量を安定させるために北海道の農業組合の人々に小麦の生産を依頼。また、北海道農業研究センターと連携し、「北海261号」の性質を備えたまま病気への耐性を持つ強い小麦への品種改良も行なわれ、ついに「ゆめちから」ができあがったのです。

 こうした多くの人々の開発努力によって、国産小麦100%使用の食パン『ゆめちから』が誕生。

 国産小麦100%の食パンには、消費者からどんな反応があったのか? 多くの人々の努力が込められた『ゆめちから』は消費者に受け入れられたのか。