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中国人の中国不信、深刻化…商品横流し目的で香港へ殺到、観光客や住民締め出し甚大な被害

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香港・上水駅の水貨客の様子(「Wikipedia」より)
 香港では、ここ数年「水貨客」と呼ばれる転売人が社会問題になっている。

 水貨客とは、旅行客のふりをして香港で販売している物品を大量購入して中国本土に持ち込み、高値で転売する人たちのことをいう。今回は、水貨客が引き起こしている問題について追ってみたい。

●急増する水貨客


 香港は、金融や経済が発達している大都市であり、中国本土とは異なる文化を持っている。1997年までイギリス領だったこともあり、英語を話せる人も多く、中国でも高所得者が集まる土地である。そうした背景から、香港マーケットにおいては、輸入品や安全性の高い食品が販売されている。

 対して中国本土では、粉ミルクに有害なメラミンが混入していた「毒ミルク事件」をはじめ、腐敗した肉が加工されて市場に出回るなど、食品不安が蔓延しており、市民は安全な食品を強く求めるようになっている。キャラクターグッズや出版物のみならず、食品も外国のコピー商品が広く出回っているため中国本土で販売されている商品への信用度は低く、香港で売られている安全な品を購入しようとする人が増えている。それを受けて、香港で大量購入して中国本土で転売する水貨客も急増しているのだ。

 彼らは、バスや船舶等で商品を運び出すが、その人数・物資量ともに尋常ではないほど多い。国境付近に存在するバス停は、常に水貨客の中国人でごった返している。大量の段ボールを運ぶ人や、一般旅行客は使用しないほど大きな150Lサイズのスーツケースを複数運んでいる姿を見かけることも珍しくない。バス待ちの行列は数百メートルを超え、乗るまでに3時間以上かかることもしばしばある。結果、観光客や日常利用者が、バスから締め出される事態になっている。

 水貨客は、段ボールやスーツケースへの詰め込み作業をバス停や駅前で行う。紙おむつの袋、家電製品の説明書、発泡スチロールなどが道のそこかしこに散乱し、バス停付近はさながら産業廃棄物の集積所状態となる。

●なぜ水貨客が存在するのか


 水貨客の増加は、食品安全性以外に中国本土の高い関税も大きな原因となっている。外国から中国国内に輸入される商品には、高い関税がかけられている。香港で購入し、輸送費・人件費をかけても圧倒的に安く済むほどに関税の額は高い。

「中国本土・香港経済連携緊密化取決め」(CEPA)と呼ばれる協定により、観光客が香港で購入した物品を中国本土へ持ち込む際に関税をかけないことになっている。水貨客は、この関税差額を活用しているのだ。家電製品やブランド品だけではなく粉ミルクや紙おむつなど、単価が安い製品も大量購入することで利益は発生し、商売として成り立つのだ。

 しかし、あまりに水貨客が増加したことで、一般のバス利用者に著しい不便が生じているため、バス会社は規制に乗り出した。それは、バス車内に持ち込める荷物は、5kg以内かつ、50cm×50cm×40cmのサイズまでとしたのだが、本規制に関し現時点では形骸化しており、バス会社職員も取り締まりには消極的だ。

 香港のマーケット側も、中国人の大量買い占めを規制していない。棚に並んでいる商品をすべて買い上げる水貨客は、商店側から見れば優良顧客だからだ。しかし、香港住民の子供に与えるべき粉ミルクやおむつが足りなくなっているのも事実である。傍若無人な水貨客の態度や行動は、香港住民の生活に少なからぬ影響を与えているのだ。

 香港住民にとって悩みのタネともいえる水貨客問題。中国大陸の人々は商売を優先し利益を向上させるだけでなく、国民性も高めていってほしいものだ。
(文=和洲次郎/ライター)