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中村芳平「よくわかる外食戦争」

ワタミ、経営危機への入り口…訪日客殺到で驚異的売上増の「北海道」との致命的な差

文=中村芳平/外食ジャーナリスト
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 その結果、コロワイドは14年度では年間16万人の訪日客を獲得、15年度では20万人を超す目標を立てている。売上高は対前年比150~160%超という驚異的な伸びを記録している。

 現在、訪日外国人の集客の決め手となっているのが、口コミの旅行サイト「トリップアドバイザー」だ。世界中の旅行者からホテルやレストラン、観光地など2億件以上の口コミが寄せられている。団体旅行、カップル、個人客などは、この旅行サイトで検索して「泊まる」「食べる」「遊ぶ」といったことを行っている。母国語に翻訳して読める機能が付いているので便利だ。

 今や外食企業は訪日外国人客を呼び込めるかどうかで、勝ち負けが決まる。ワタミは長く業績を悪化させていた関係で、訪日客向けの店を開発できなかった。みすみすビジネスチャンスを逃してきたのである。

ワタミの誤算

 ワタミが訪日外国人客を意識した和食居酒屋「炉ばたや銀政 銀座数寄屋橋総本店」(130席)を開店したのは14年3月のことだった。「温故知新(日本の魅力再発見)」「エンターテインメント・シズル」「モダン」をコンセプトにした大型の炉端焼き店である。大きなオープンカウンターを中心にして、テーブル席、宴会席を配している。鮮魚、刺身、焼魚を目の前で調理して、皿に盛った料理を大きなしゃもじに載せて客に直接渡す。飲料は日本酒を前面に打ち出し、英語、中国語、韓国語のメニューを用意した。客単価はワタミの中で最も高い4000円以上。

 筆者は14年6月に、ワタミ前社長の桑原豊氏にインタビューした。

「銀政は非常に好調です。訪日外国人客も予想通り来店しています。銀政は『坐・和民』を業態転換して、14年9月に六本木店、同年11月には新宿野村ビル店を開店します。年内にもう1~2店舗開店したいと思っています」

 ワタミが遅ればせながら取り組んだ、訪日外国人客を狙った「銀政」は好調に推移していた。

 ところが、筆者が桑原氏にインタビューした後、ワタミの主力である「和民」「坐・和民」「わたみん家」の既存店の売上高が予想以上に悪化し、15年3月期で128億円の巨額な赤字を出した。不振店舗の閉鎖は102店舖に拡大、ワタミは新業態開発に投資している余裕がないほどに追い込まれた。
(文=中村芳平/外食ジャーナリスト)

中村芳平/外食ジャーナリスト

中村芳平/外食ジャーナリスト

●略歴:櫻田厚(さくらだ・あつし)

1951年、東京都大田区生まれ。高校2年生の時に父が急逝し大学進学を断念、アルバイトして家計を助ける。都立羽田高校卒業、広告代理店勤務。72年に14歳年上の叔父(モスフードサービス創業者・櫻田慧)に誘われ「モスバーガー」の創業に参画。フランチャィズ(FC)オーナーなどを経て、77年に同社入社。直営店勤務を経て教育・店舗開発、営業などを経験。90年、初代海外事業部長に就任、台湾の合弁事業の創業副社長として足掛け5年半でモスバーガーを13店舗展開。1985年の株式上場と244店舗展開(16年9月末)、そして同社の海外展開の基礎をつくった。慧氏は97年にくも膜下出血で急逝、享年60。櫻田氏は98年社長に就任、14年会長兼社長に就任し、今年6月、社長を常務取締役執行役員の中村栄輔氏(58)に譲った。社長交代は18年ぶりのことだ。櫻田氏は中村氏に国内事業、新規事業を任せ、海外事業に全力を注ぐ構えだ。「モスバーガー」を世界のブランドにするという、夢の実現に向かって挑戦しようとしている。

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