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小林敬幸「ビジネスのホント」

日本企業がダメになった本質的原因…生き残りの必須条件はリーン、デザイン、オープン

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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デザイン思考

 デザイン思考は、一言でいうと、課題設定に創造力を使うことを志向する「創造的課題設定」だ。念のためにいっておくと、ビジネスの起業に絵心を求めるものではない。

 デザイン思考の説明では、自動車を開発した米フォードの話がよく引き合いに出される。顧客にニーズを聞いたら、「もっと速く走る馬車が欲しい」と言うだろうけれども、馬の数を2倍にした馬車を用意しても仕方ない。「速く快適に移動したい」という潜在的なニーズにとらえなおして、自動車の開発につなげなければならないとした。つまり、共感力を使って、顕在化していない課題を創造的に設定しなければならない。

 もうひとつ、デザイン思考でよく出される例がある。新築巨大ビルのエレベーターの待ち時間が長すぎると苦情が殺到した。その問題の解決のため、エレベーターの増設ではなく、エレベーターホールに全身が映る鏡を設置したら苦情がなくなったという。本当のニーズは、数分の待ち時間を短縮することよりも、待ち時間の不快さを解消することだと見抜いたのが正しかった。

 筆者の思うに、デザイン思考と対比されるべきは、「プロジェクトX志向」だ。巨大ダムの建設、電気炊飯器の開発など、実現できれば世の人が喜ぶのは自明なので目標設定に創造力を使っているわけではない。すでに設定された課題の遂行に創造力と勇気と努力を最大限発揮しているのだ。従来の経済構造では、誰にとっても自明な目標をより早く、より安く実現する企業が競争優位にたてたのである。

 これに対してデザイン思考は、課題の設定に共感力と創造力を駆使して力を注ぐ。そして現代ではデジタル製造技術が進歩したので、よい課題が設定されさえすれば、比較的容易にその課題を解決・遂行することができる。

オープン

 オープン・イノベーションは、自前主義をやめ他業界や他社と連携協力してイノベーションを起こそうとするものだ。従来の大企業のようになんでも自前主義で囲い込む姿勢をとろうとしない。起業を目指す個人やベンチャー企業にもオープンで、大企業が一般から参加できるビジネスアイデアのコンテストをしたり、ピッチやハッカソンという起業イベントを支援したりしている。

 オープンにやろうとするのは、自社内で研究開発しているだけでは、スピードが遅くて競争に負けるからだ。また、ネットワークやサービスなどの成長している分野では、異分野の連携こそが付加価値につながるからでもある。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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